実況者の坩堝-前編-.5 ページ49
坂口さんとの会談は、数時間掛かった。これからの行動も含めて、色々と考えたのだ。
「さて、一先ずこれで様子見をいたしましょう。くれぐれも、シナリオを制作しないでくださいね。TRPGをするのも禁止です」
書類をまとめながら、坂口さんは口を酸っぱくして注意してくる。
「異能使うなって言ってないだけマシでしょう」
「使うなって言ったら、今度の懸賞どうするのか迫ろうかと思いました」
「何が欲しいんですか」
それはもうゾンビの如くとつげれば、その時は捻りあげると、一般人泣かせなことを言われてしまった。鬼かな?
「魔法のカード」
「……自分の給料で買ってください」
呆れられた瞳で、坂口さんは私を見ると額を指で抑えた。小さく頭痛いとか聞こえたが、聞こえないふりをしておくとしよう。
「では、気をつけてくださいね」
もうとっくに日を跨いでいた。危険だというので、坂口さんが直々に送ってくれた。
「分かりました。じゃあ、また」
私はさっさと家に入る。ガランとしていて、何も異変はない。安いマンションだ。設備はいいが、割と古い。
───異能が奪われている可能性が。
「相手の異能の一部を奪う、異能」
私が覚えていない記憶に関係するのだということは理解していた。
写真の男を思い返す。
「フランスの異能犯罪者」
思わず口角が緩んでしまう。なんなら、高笑いしてもいい。近所迷惑だけど。
「ゲームみたいな、展開だ」
曉が高揚感に満たされている中、主を迎えた部屋は電気もつかずにただ、月明かりに照らされ続けていた。
「なんつうか、特異っていう話の割には普通の子でしたね」
坂口の部下は、後部座席の彼にそう評した。坂口は、その言葉に眉間に皺を寄せた。
「普通?あれが、ですか」
あまりにも低い声に、部下は、え?と首を傾げる。坂口は一息をつくとシートに身を任せた。
「僕は恐ろしいですよ」
まるで、化物と相手している気分だと、坂口は呟く。彼の見上げた先には、怖いくらい綺麗な満月が浮かんでいた。
「────
古くなったフローリングの床が悲鳴を上げる。暗い闇に溶け込むように木の上を歩く男の足音は無に等しい。
黒いフードをかぶった男は、とある部屋の前に辿り着くと引き戸を開けた。無人の部屋には、幾つものボードゲームや、紙が置かれていた。
「もうすぐ、もうすぐだ」
ニヤリと男は口角をあげた。
ただ、ただその光景を月が、照らしていた。
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しき(プロフ) - 黒井蜜柑さん» 消しちゃいます…で、また入れてクリアして消して…((( (2021年9月5日 23時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - しきさん» ノベルゲーム関連はやったら消しちゃいますよね…… (2021年9月5日 2時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - 黒井蜜柑さん» 私もこの間までやってました。全クリしたので消しちゃいましたけど(( (2021年9月4日 18時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - しきさん» 昔してたんですよ (2021年9月4日 9時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - 四ツ目神知ってるのちょっと嬉しい…() (2021年8月31日 19時) (レス) id: f7f2a05743 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年9月1日 14時