【巨大企画】愛する君へ【実/.況.者】 (ページ28)

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爬虫類　<トントン> ページ28

爬虫類

彼は踊り場から窓の外をじっと見つめていた。通った鼻筋に、白い肌、爛々と輝く蛇眼、そして平均より少し高い背。すべてに目を奪われる感覚、私は階段を下る事すら忘れ、彼の事を見つめていた。

多分、あの時気付いたのだ。

・・・

俺が小学二年生の時に、彼女は隣に引っ越してきた。特別可愛いわけでは無いが、明るく元気で誰とでも仲良く出来る彼女は、たちまちクラスの人気者になった。そこそこ男子に好かれていたため、一部の女子には嫉妬されていたのだ。

小学三年生の頃、彼女に嫉妬していた女子に「トントン君はAの事が好きなんや！」と煽られた。

「...そんなことないわ」
「嘘だ！じゃあ死ねってAに言ってや！」

その日はじめて、俺はAに暴言を吐いた。
それから彼女は俺に一切話しかけなくなった。ギスギスとしたまま小学校を卒業し、中学生になると彼女はいじめられるようになっていた。
俺には関係ない。所詮ただの隣人でしかない、と俺は無視を続けていた。罵倒され軽蔑されていた彼女は、ついに暴力を振るわれた。

それでも彼女は、ただヘラヘラと笑い続けていた。その後彼女は卒業式に出ることなく俺と同じ高校に進学したのだ。

・

入学式を終え、三ヶ月ほど経過した。
クラスにはちらほらと固定のグループができている。中学の時と変わらず、彼女はいじめられている。いじめられているところを目撃したときに、必ず彼女と目が合う。それで、俺と目があった彼女は、「心配しなくてもいいよ」と口パクで俺に伝え、へらりと笑って見せた。
俺は心配なんかしていない、彼女を助けるつもりはない。
今日も彼女は、屋上の隅で暴力を振るわれている。俺はそれに背を向けて、歩き出す。

「意味わからんわ」

ぽろりと、吐き捨てた。

・

「あーあ、トンちゃん、またどっか行ったで」
「一緒にやればいいのにな」

彼女らはへらへらと笑いながら、屋上から去っていくトントンを見届けていた。トントンが完全に見えなくなると、彼女らはまたこちらに目を向ける。

「今日、どうしよ」
「んー、毎日痛いことされるのも、可哀想やしな」
「せや！オシャレ、してみん？」

一人が、おもむろにカラーリング剤を取り出す。水もシャンプーもないこの空間で、私の髪を染めようと言うのだ。髪を染めるのは校則違反であった、私は少しずつ後ろに下がっていく。