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それ以来、私はセピア先輩見つけると積極的に話しかけに行くようになった。
またあの時みたいにお話がしたくて…セピア先輩の声が聴きたくて…柔らかな笑顔が見たくて…。
ただ、簡単に話せる、という訳ではなかった。
セピア先輩は、毎日引っ張りだこにされていた。
学年の生徒会長を務めて、海外交流の時はペラペラの英語でスピーチを担当して、たまに吹奏楽部の指揮者もお手伝いでしたり、友達とバンドを組んで文化祭を盛り上げたり…。
前に先生で思った『人気者』っていうのは、生徒でも全く同じことが言えた。セピア先輩の周りは常に人で溢れている。
ただでさえ学年の違う私が入る隙なんて、無いに等しい。でも、私は諦めきれなかった。
だから、生徒会にも立候補したし、近づけるようにと努力した。少しでも可愛くなろうと思ってお洒落な友達に相談してみたりダイエットも頑張った。
ほんの一瞬でもいいから、振り向いてほしくて。
*
月日はあっという間に経ち、先輩にとっての三度目の春が訪れた。桜は沢山の蕾で綺麗に咲く準備を進めている。
本番の告白は卒業式の後、私がこっそり鍵を持ち出してドアを開けた屋上で。
押し寄せる緊張に微かに震える手。セピア先輩に想いを伝えなければ今までの努力が水の泡になる。
凄い素敵な先輩だから既に彼女がいるのかもしれない、それか他に想いを寄せている人がいたりして。良い返事が貰えるなんてこれっぽっちも思ってない。
それでも…
「私の想いをしっかりと伝えなきゃ」
目尻に涙が溜まるのを感じながら、決意を抱いた。
「ごめん、Aちゃん、待った…？」
ガラッ、とドアが開くと同時に顔を出したのは、憧れの大好きなセピア先輩。
「セピア先輩！」
「遅くなってごめんね。色んな人に捕まっちゃってさ」
一生懸命に走ってきてくれたからか制服が少し乱れている。ブレザーの胸元にある白い薔薇のコサージュが卒業生だと物語っていた。
「いえ、私は全然大丈夫です…。大変なのに呼んですみません」
「俺も大丈夫だよ。それで、話って？」
問い掛けてくれるセピア先輩の声はいつもの様に優しくて胸が苦しくなる。今日で最後になるのかもしれない、静かに零れ落ちた涙は頬を伝った。
「せ、セピア先輩、あの…私…先輩のことがっ」
振り絞った勇気が、私の口を動かした。
「好きです！」
ヒュウ、と屋上の風が小さく鳴いた。
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