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首を傾げる彼を他所に、私はまた窓を見た。
ぽつり、ぽつり、と真っ青な空に雲が浮かんでいる。
桜がなくても、ここは空気が澄んでいるから、雲の形をはっきり覚えられる。
あとで、お母さん達に空の写真を撮ってもらおう。
「…空が青い。
すげぇ、真っ青、真っ青だ!
写真撮りてぇ…。」
ふと横から声が聞こえたかと思えば、私と同じように空を見てはしゃぎ出すあろまくん。
そして、親指と人差し指で長方形の枠を両手で作って、そこから空を覗いた。
『ガキか』
「うるせぇ、俺にとってはこの一時が至福の時間なんだよバーカ」
『あーあ、あとでお母さんにこの空撮ってもらうから、あろまにも写真あげようと思ってたのになぁ、馬鹿、って言われたからあーげない』
「な…!?それはなしだろ、おい!!」
あろまくんに肩を物凄い勢いで揺さぶられるから、なんだか酔ってきてしまった。
『わか、わかった、から、ごめんてば、ゆ、揺らすのや、めて、よ』
「ほんとか!?」
私がなんとか彼に言うと、次に彼は私の頬を両手で抓り始めた。こうすると喋りにくい。
なんとかして、口を動かした。
『神にちかいまひゅ』
「本当か、否か。」
『本当です〜手を離してくださいいい』
どうやら満足のようで、期待に満ちた眼をしながら、あろまくんは私の頬から手を離した。
それよりも、私、あろまくんに抓られたんだ…
リア充みたいな事をして、はたしてお互いの欲望は満たされるのか。
結ばれるならもう早く結婚を前提に付き合いましょう。←
「あー、でも…」
そんな私の妄想を打ち砕いたのは、あろまくんだった。
でも、の言葉の続きが気になって、早く早く、と彼を急かした。
「…やっぱり、Aとも写真、撮りたいなぁ…」
そう言われてしまって、私の顔は恐らく真っ赤だろう。
そのあざとさが残っている横顔で、そんなこと言わないで。
狂おしいほどに愛しくなってしまう。
これは重症だ。
私がぎこちなく笑うと、彼は澄み切った笑顔で笑った。
『…しょうがないなぁ、撮ってあげるよ』
「上から目線かよ」
嫌々、そんなことはない。寧ろ一緒に撮りたかったレベルです。
風が吹いた。
会話も続かず、お互い、終わりの見えない真っ青な空を見続けていた。
このあと、こんな澄み切った空の下で、私は上手く笑えるだろうか。頬は紅潮して、なんだか無様な姿にはならないだろうか。
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