Story.4 ページ6
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「店長、これ何番テーブルやっけ?」
「え?……あ、それは4番テーブルだよ」
鼓膜に聞き慣れた声が響いて、俺は我に返る。
そうだ、ここは2023年、10月20日の『カフェ パウダースノウ』だ。
決して、あの、1998年、10月20日の江戸川幼稚園、ゆり組なんかじゃない。
そうわかっているのに、一瞬ここが教室のように見えてしまうのは、最近疲れているからだ。
そう自分に言い訳して、盛り付け途中だったらしいハニートーストの上にミントを飾り付けた。
「なあなあ、今日の舘、なんか変やない?」
無事……とはお世辞にも言えないけれど、取りあえずカフェの営業時間も終わり、テーブルを拭いているときに、ふと康二から尋ねられた。
「変……そうかな?」
そうはぐらかしてはみるものの、こんな嘘、人の感情に鋭い康二に通用するわけがないのはわかっている。
今日の俺は、自分でもわかるくらいに変だった。
いつもは気付いてもそこまで気にはならない、内側にわずかにはねたスープ。それに、皿に添えられたパセリの量がなんだか足りない、というような、本当にどうでもよくて些細なことにさえも苛立ってた気がする。
「変やったよ!だって、いつもの舘ってなんか、こう……常に落ち着いてて、ロイヤルです!って感じやん?」
「そうかな?」
「そう!だけど、今日はなんか……話しかけても上の空やし、ちょっと苛立ってるし、なんか、こう………そう!遠距離恋愛してる彼女みたいやった!」
大きな身振り手振りで演説されて、思わず俺は軽く吹き出してしまう。本人は「もう!なんで笑うん?!」と不満げな様子だけれど。
(でも、まあ)
遠距離恋愛、っていうのは、ある意味では合ってるのかもしれないな、なんて、内心で呟いてみる。
「…?急に黙り込んでどうしたん、」
言い過ぎた?ごめんな?と俺の顔を覗き込んでくる彼に、ふと思いついたことを言ってみる。
「……康二はさ。運命の相手とか、魂の片割れとか。そういうのって、信じるタイプだったりする……、?」
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (1月17日 21時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
葵 涼翔(プロフ) - ℛさん» 嬉しい感想、ありがとうございます!現在続きを書き溜めしている途中ですので、ぜひ楽しみにしててもらえると幸いです! (12月5日 12時) (レス) id: e32b23911b (このIDを非表示/違反報告)
ℛ - めちゃくちゃ好きです、続き待ってます!応援してます (12月4日 18時) (レス) @page30 id: c3fc1ccfa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 涼翔 | 作成日時:2023年10月27日 14時