Story.1 ページ3
nb side.
「えーっと……なんか、何だろう、さらに感情込めて歌ってもらってもいい?あくまで、情熱的なラブソングって感じだから」
頭上から降り注ぐ声に、俺の意識は“今”へと引き戻される。
あわてて「了解です」と返すと、「それじゃあさっきのところからね」と、分厚い一枚のガラスを挟んだ向こう側の人が言う。
自分の右側に置いた譜面台に目を落とすと、過去の自分が書いた『感情を爆発させる感じ』という赤ペンの文字が映る。
「すみません、さっきの俺の歌、聴いてみてもいいですか?」
「あ、いいですよ!」
数秒の静寂のあと、スピーカーから響いた俺の声には、たしかに感情が乗っていないように聞こえた。無感情、とまではいかないけど、とてもCDにはできなさそうな出来栄え。
(レコーディング中に考え事とか、今日の俺、らしくねぇな)
いくら気になることがあっても、仕事とプライベートは切り替えてね、と、この前マネージャーにも注意されたばかりなのに。
それでも上の空になってしまっていた自分に反省しつつ、俺はもう一度譜面に目を落とす。
(恋の感情……燃え上がるような恋情)
恋とか、愛とか、そういう単語を目にするたびにいつも、あいつの影が頭をよぎるのは、一体どうしてなんだろう。
「はい、本日のレコーディングは以上になります!渡辺さん、ありがとうございました!」
「ありがとうございました」
軽くガラス壁の向こう側のスタッフさんに会釈をしてから、俺はヘッドフォンを外す。スタジオから出ると、芳香剤のラベンダーの匂いがうっすらと鼻をくすぐった。
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (1月17日 21時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
葵 涼翔(プロフ) - ℛさん» 嬉しい感想、ありがとうございます!現在続きを書き溜めしている途中ですので、ぜひ楽しみにしててもらえると幸いです! (12月5日 12時) (レス) id: e32b23911b (このIDを非表示/違反報告)
ℛ - めちゃくちゃ好きです、続き待ってます!応援してます (12月4日 18時) (レス) @page30 id: c3fc1ccfa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 涼翔 | 作成日時:2023年10月27日 14時