39 ページ32
( A
*
*
*
「......あ、Aさーん！こっちー！」
いつもの明るい笑顔で手を振っている元太くんを見つけて、早足で駆け寄った。
「おはよー」
「おはよー」
海人くんと宮近くんは先に来ていて、私が３番目。
宮近くんと待ち合わせをするから一緒にどうかと海人くんに誘われていたけれど、家を出る前に溜まっていた洗濯物を片付けてしまいたかったので、先に行ってもらうことにした。
「Aさん、来てくれてまじでありがとね！」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。すごく楽しみにしてたよ」
「おーし、やる気出てきたぁー！」
「ふふ。かっこいい姿見せてね」
元太くんは、試合前のウォーミングアップ中に海人くんたちを見つけて、話しかけに来ていたらしい。
ユニフォームにジャージを羽織った姿で、気合十分といった感じ。
「クラは？」
「そういえば......まだ？」
キョロキョロする元太くんと海人くんの横でひとりだけ違う方向を見ていた宮近くんが、「おっ」と声を上げた。
「来た来た」
「どこ？」
「ほら、あそこ」
宮近くんの指差す方向に、こっちに向かって歩いてくる松倉が見えた。
そばについて来るのは......例のあの子？
「......あれ。あの子も一緒なんだ」
海人くんが呟いて、私を見る。
「やっぱ、つき合うことになったのかな？」
「......かもね」
「Aちゃん、知らない？」
「うん」
「後で聞いてみよっか」
イエスともノーとも言えず、笑顔を作って頷いた。
私たちの輪に混ざった松倉は、なんとなく浮き足立っている海人くんを他所に、いたって普段通りの顔をしていた。
「クラさん、ありがとー」
「ごめん、遅くなった」
「全然！試合まだ始まらないから」
「そっか。よかった」
そう言いながら、チラリと松倉が私を見る。
目が合って、ドキッとして、咄嗟に笑って見せた。
「......おはよ」
「うす」
交わしたのは、たったそれだけ。
それだけで、視線はまたズレていく。
こっちを見ようともしない松倉を見ているのも苦しくて、それ以上は期待しないことにした。
こうなることは想定内だったけど、なんか......つらいな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えみゅ(プロフ) - ターンカッピさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです☆これからも引き続きよろしくお願いします。 (2023年2月22日 12時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ターンカッピ(プロフ) - つい最近読み始めて最新話まで一気読みしたのですが、えみゅさんの文章の書き方が読みやすくて好きです(*´∀｀*) (2023年2月22日 2時) (レス) @page31 id: 9f8ba39594 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えみゅ | 作成日時：2023年2月7日 22時
