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「部活なんてやってたらバイトできなかっただろうしね」
「そうかもね。松倉くんがうちに入ってきてくれて、本当によかったな」
彼女は半年ほど先輩で、俺が入ってきたときに、今まで同い年がいなかったから嬉しいと言ってくれた。
あの頃は、まさかこんなことになるとは夢にも思っていなかったけど......彼女はいつから俺のことを好きになってくれたのだろう。
「松倉くん、いつも真面目にメモ取ったりしてたよね」
「あー、そうだったっけ。うちの店みたいなところで働くの初めてで、迷惑かけないようにってすごい必死だった気がするけど」
「お客さんに連絡先もらってたこともあったよね？」
「え、よく覚えてるね」
「だって、私だって連絡先交換したいのになってずっと思ってたもん」
彼女について、後から知ったいくつかのことのうちの、ひとつ。
こっちがどうしていいかわからなくなるくらいにストレートな物言いをする、ということ。
「でも、そのときから松倉くんはAちゃんのことしか見てなかったんだよね」
「まあ......そのときはね」
「今は違うの？」
「......違うに決まってんじゃん」
......俺、今、変な顔になった。
鏡を見なくてもわかる。
彼女には気づかれただろうか.......
嘘をつくのは、相変わらず上手くない。
「そっか」
「そうだよ」
「どっちにしろ私は松倉くんが好きだよ」
ツヤツヤの頬をワインと同じように赤く染めて、彼女は微笑んだ。
気づけばワインは残り１／４。
短い宴もそろそろお開きだ。
「いつもごめん。俺、あんまりそういうの言われ慣れてなくて......」
「連絡先もらったりしてるのに？」
「そういうのとは別じゃん。その、本気度っていうかさ......」
「そうやって気遣ってくれるの、嬉しい。ありがと」
なんでこんなに優しいんだろ。
俺なんかに。
本当は、今だに振られた相手のことで頭がいっぱいな、この俺なんかに。
「......イケメンくんの試合、ちょっとだけ行ってみようかな」
「本当？じゃあ一緒に行こうよ」
「うん。連れてって」
「良かった。元太も喜ぶと思うわ」
でも、少しでも前に進まなきゃ、って思う。
きっといつか、また笑って会えるようになる、その日まで。
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えみゅ(プロフ) - ターンカッピさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです☆これからも引き続きよろしくお願いします。 (2023年2月22日 12時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ターンカッピ(プロフ) - つい最近読み始めて最新話まで一気読みしたのですが、えみゅさんの文章の書き方が読みやすくて好きです(*´∀｀*) (2023年2月22日 2時) (レス) @page31 id: 9f8ba39594 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年2月7日 22時
