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最後に来たのは、いつだろう。
小学校の低学年か、もっと前?
もしかしたら、ちょうど、海人くんに出会った頃かもしれない。
とにかく、久しぶりだった。
久しぶりすぎて、逆に初めてみたいな、新鮮な気分だった。
「どちらの手がよろしいですか?」
入口で尋ねられ、一瞬考えてから、左手首を差し出した。
リストバンド型のフリーパスをぐるりと巻きつけられ、「なくさないようにお気をつけくださいね」と念を押される。
隣では、海人くんが同じようにパスを巻かれている。
左手首に、おそろいの、明るい緑色。
顔を見合わせて笑うその顔は、どこかやんちゃな子供のようだった。
「よし、行こっか」
「うん!」
男の子とふたりで遊園地って......考えてみたら、初めてだ。
ゲートを抜けて、フリーパスと一緒にもらった園内マップを広げた。
ふたりで覗き込んで、広い園内をできるだけ無駄なく歩くための作戦を練る。
ジェットコースターには乗りたいね、という意見は既に一致していたから、3種類あるうち、まずは腕試し感覚で一番小さいコースターに乗ってみることにした。
目指す場所が決まったら、足取りも自然と弾んだ。
「やっぱテンション上がるなー」
その言葉通り、心なしか、海人くんの声はいつもより高い。
「しかも晴れてるし」
「あったかいしね」
「ね。めっちゃサイコー」
ニコニコ、嬉しそうな顔を見ていると、私まで嬉しくなる。
こんな子供っぽいところもあるんだ......なんて、海人くんの知らなかった部分を、またひとつ知った気分で。
「一緒に来てくれてありがとね」
「こちらこそ。連れてきてくれてありがとう」
「ほんと、如恵留くんに感謝だね」
チケットをもらったから、と海人くんに誘いの連絡をもらったとき、最初は戸惑った。
どうして私を?という疑問がまっさきに湧いてきて、どうしても素直に喜べなかった。
だけど、そんな自分をつまらないとも思った。
考えすぎて動けないでいるのは、動いて後悔するよりも、何よりも、きっとつまらない。
実際、ここへ来てみたら、そんな戸惑いも一気に晴れてしまった。
今日の空と同じように、海人くんの笑顔が、まぶしいから。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時