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横で聞いていて、意外だな、と率直に思った。
実際、いつも女の子のほうから寄ってきてるのも知ってるし、そんな海人くんが実は臆病なんて言われても、あんまりピンとこない。
「Aちゃんには自分から連絡してるみたいだけどね。そういうの、けっこうめずらしい」
「それは......海人くんにとってもAさんは特別ってことなのかな。Aさんと同じように」
小さいときに一度出会っているふたり。
大人になって再会して、改めてお互い惹かれあったのだとしたら、特別な運命を感じていても、不思議じゃない。
運命なんて本当にあるのか、俺にはわからないけど。
「あのふたり、つき合うと思う?」
「うーん、どうだろう」
「ちゃかちゃんから見て、どう?」
「俺は......わかんないけど、みんなハッピーになればいいと思ってるよ」
そう言うちゃかちゃんの顔は、明るい店の中をもっと明るくするような笑顔だった。
「みんなそうじゃない?仲良い人たちがハッピーだったらさ、それだけで自分も嬉しくならない?」
「うん、わかる」
「クラだって、Aちゃんがハッピーだったら嬉しいよね?」
「もちろん。Aがハッピーだったら、俺はそれでいいし」
「俺もそれ!」
唐突に声を上げた俺を、クラさんとちゃかちゃんが驚いたように見る。
「俺が言いたかったのはまさにそれ。俺はね、クラさんにハッピーになってほしいの」
「元太......」
「気持ち切り替えるのってそんな簡単じゃないと思うけど。とにかくさ、目の前のイベントを楽しんだほうがいいって!」
「さんせーい!俺もそう思う!」
高々と手を挙げるちゃかちゃんに、クラさんが観念したように笑い出した。
「わかったよ。もう」
かと思うと、スマホを取り出して、何やら弄り始める。
早速、例の女の子に返信を打っているようだった。
「とりあえず行くわ、遊園地」
「うん!うわ、いいなー。俺もモテてーなぁー」
「元太はモテるでしょ?」
「そういうちゃかちゃんはどーなの??」
「俺のことはいーの。そういうの苦手だから」
「えー、なんだそりゃ」
シェイクが空になった後も、あーでもないこーでもないと、3人で語り合った。
遊園地デート......楽しめるといいな。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時