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「あ!あれ、ちゃかちゃんじゃない?」
「え?あ、ほんとだ!」
2階の窓際の席だから、外の景色がよく見える。
それは間違いなく、ちゃかちゃんだった。
ふたりで窓に張りつき、手を振っていると、ちゃかちゃんは俺らの視線に気づいたのか、タイミングよく顔を上げた。
「あ、気づいた!おーい!」
「ひとりなんかな?来い来い!」
「こっちこっちー!」
必死に手招きすると、伝わったのか、満面の笑みで親指を立て、グッドサインをするちゃかちゃん。
そのまま店の中に入り、2階の俺らの元へとやってきた。
「おつかれぇ」
「おっつかれー」
ふたり用の席に、クラさんが予備で置いてあった椅子を引っ張ってきた。
ちゃかちゃんはホットコーヒーを持っていて、あちあち、と言いながらその椅子に座った。
「シェイクじゃないの?」
「うん。こないだ飲んで寒くなっちゃったから」
「だろうね。俺らも寒いもん」
「それに2個になっちゃうしね」
確かに。
一個買ってもう一個無料でもらっても、ひとりだったら、飲み切れそうにない。
「海人くんは?一緒じゃないんだ?」
「先に帰っちゃった。Aちゃんと」
「えっ、」
思わずリアクションしてしまったのは、俺のほうで。
クラさんはというと、黙ったまま、ちゃかちゃんの言葉を咀嚼しているようだった。
「だから俺、置いてかれちゃって」
「......だってさ、クラさん?」
「そっか」
クラさんはそっけなくそう言って、シェイクを啜った。
そんなクラさんを、ちゃかちゃんの大きな目がじっと見る。
「クラ......気になる?」
「いや、別に?」
「気になる、って顔に書いてあるよ」
ちゃかちゃんにちゃんと説明したことはなかったけど、近くで見ていたら、なんとなくわかるよな。
クラさんとAさん、それに海人くんの微妙な関係性、というか。
「こないだも海人に怒ってたもんね。Aちゃんに変なことしたら許さない、って」
「怒ってたわけじゃないけど」
潔くないクラさんに、「そっか」とちゃかちゃんは微笑む。
「海人って、簡単につき合ったりはしないタイプでさ」
「ふうん」
「女の子といい感じになっても、それで終わるパターンが多かったかな。特に最近は」
「へえ......なんか、もったいなくね?」
「怖いのかも。ああ見えてけっこう臆病なところがあるから」
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時