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店内には学校終わりの学生らしいお客さんがたくさんいたけれど、２階の窓際に空席をひとつ見つけて、そこへ座った。
まんまと策略にハマって、ふたりの手には冷たいシェイク。
私はチョコで、宮近くんはストロベリー。
「寒いのにね」なんて言って笑いながら飲んで、その冷たさに震えながら、ふたりでまた笑った。
「......さっきさ、」
ひと息ついたところで、宮近くんが言う。
「正門のところに海人がいたの、気づいてた？」
出されたその名前に、ドキッとする。
急に現実に引き戻された感じがして、笑顔が引きつってしまった。
「うん。気づいてた」
「それで早歩きしてたの？」
「......バレてた？」
「まあね」と宮近くん。
「Aちゃんが前に言ってたのってさ、あのふたりのことでしょ？ずっと会いたかった初恋の人が海人で、Aちゃんのこと好きだっていう友達が、クラ」
「うん......」
「あの後クラとはちゃんと話せた？」
「うん。......そうだ、宮近くんにお礼言わなきゃって思ってたんだ」
「お礼？」
あのとき、あの偶然出会ったバス停で、宮近くんがパワーを送ってくれたから、松倉と向き合えた。
涙と共にスッキリ吐き出せて、私の心は軽くなった。
それは間違いなく、宮近くんのおかげ。
「本当にありがとう」
「俺は何もしてないよ」
「でも、あのパワーが効いたみたい」
「あと、呪文ね」
「そうそう。勇気の出る呪文。あれは何て唱えてたの？」
「......知りたい？」
頷くと、宮近くんが顔をグイっと近づけてきた。
「"Aちゃんが幸せでありますように"」
見つめられて、その大きな目に吸い込まれそうだ、と思った。
「クラはさ、すごくいいやつっぽいよね」
「うん......すごくいいやつ」
「Aちゃんのこと、いつも真剣に考えてる」
「そうなの。だからもう振り回したくない」
「大切、って言ってたもんね」
「うん。でも、もう大丈夫だと思う。女の子と飲みに行ったりしてるみたいだし」
講義が始まる前、予定の返信をしていた松倉の横顔は、楽しそうだった。
最近の松倉は、私といても困ったり怒ったりな顔になることが多かったから、楽しそうにしていてくれたらそれでいい、と思えた。
その相手の子も、きっと、優しい松倉のことを好きになる。
ていうか、もう、なっているのかもしれない。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年1月13日 22時
