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「今度、バイト先の子とさー。ほら、こないだの試飲会にいた」
「あの、松倉と一緒に準備してた子?」
「そうそう。あの子とさ、飲みに行く約束してて」
言いながら、自分のスケジュールを見た。
彼女と予定の合う日をいくつかピックアップして、すぐに返信を打つ。
「こないだまた閑也さんがヘルプで来てくれたんだけどさ。そのとき、同じ系列店でもやり方とかちょっと違うねって話になって。で、見学ついでに今度一緒に行ってみようかって、その子が」
俺も彼女も、閑也さんのいる2号店には行ったことがなくて、お互いにいつか行ってみたいと思っていたことがわかった。
俺としては、飲みに行くというよりは勉強の意味合いが強いけど、楽しみではあるし、何にせよいい機会だ。
バイトだろうが何だろうが、やるからには真面目にやらないと。
前に「よくやってくれてる」とのえさんにも言ってもらえたし、期待してもらってるのなら、尚更。
「俺初めてだし、めっちゃ楽しみなんだよね」
「そうなんだ」
「どうせ行くならゆっくりしたいからさ、お互いシフト入ってない日にしようと思って」
彼女も別の大学の学生だから、今頃同じような時間を過ごしているのかもしれない。
返信の返信はすぐに返ってきて、決行の日は難なく決まった。
「......楽しそうで、いいね」
スマホを机に伏せたところで、Aが言った。
「しーくんに会えたらよろしく言っといてね」
「え、うん」
にっこり微笑んでそう言った後、Aはそれきり前を向いてしまった。
そうしているうちにいつのまにか先生がやってきて、講義が始まった。
彼女とメッセージのやりとりしていたら、バイトのことを思い出してしまった。
そういえば、今日は週末。
相当忙しくなりそうだということにも気づいてしまって、少し憂鬱な気持ちになった。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時