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「......ねぇ、聞いていい?」
少し迷ってから言うと、Aが無言で視線を向けてきた。
「こないだどーだったの?海人とのデート」
「えっ」
「......なに、そんなびっくりしなくても」
「あっ、そうだよね......ごめん」
何を思っているのか、Aは少し焦ったように苦笑いした。
「どうって、普通だよ。別にデートじゃないし」
「普通?」
「普通にごはん行って帰っただけ」
「立派なデートじゃん」
「よかったな」と付け足すと、苦笑いが更に苦々しくなった。
顔に出すぎなおかげで、何かあったのだとわかってしまうのが、今の俺の立場からすると、なんともつらい。
「......何か気になることでもあんの?」
「ううん。ないない」
「ほんとに?」
「うん。あったら言ってるし」
嘘ばっかり。
あるから言わないんだろーが。
そう思ったけれど、これ以上食い下がるのはやめておくことにした。
海人に言った通り、俺はAの "ただの友達"。
悔しいけれど、ハッキリふられた以上、線引きは必要だ。
「......ま、俺には言いたくないよな」
それもまた、仕方がないことで。
Aと海人の世界を俺が100パー知ることなんて、無理なわけで。
「え?何か言った?」
「んーん。何でもない」
よかった、聞こえてなくて。
我ながら嫌味っぽかったもん、今の。
それにしても、そろそろかな。先生がやってくるのは。
このままこうして座っているだけなのも、なんとなく気まずいから、早く来てくれないかな。
時間を見ようと、ポケットに入れていたスマホを出すと、メッセージが1件届いていた。
「......あー、この日か」
メッセージを黙読して、つい独り言をつぶやいた。
隣のAが「どうしたの?」と俺を見る。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時