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「......そういえば、」
「ん？」
「クラ、Aちゃんと何かあった？」
チラリと隣を見ると、クラは一瞬、目を泳がせた。
「何かって？」
「こないだAちゃんが、クラのことで落ち込んだとか何とか言ってたからさ」
「......別に何もねーよ」
いや、あるだろ。その反応は。
「え、なんで？おしえてよ」
「だから何もねーって」
「嘘。その顔、絶対なんかあったっしょ」
「ないって！」
「ねえ、本当は？本当は？？」
「だからぁ......」
困り果てたようにこっちを見るクラ。
目と目が合って、心にブレーキがかかる。
「......やっぱもういいや」
「は？なんだそれ」
「もういいって言ってんの」
「なんだよ、わけわかんねーやつ」
「だってクラはさ、Aちゃんの何なの？」
「何って......ただの友達だよ」
「そう。ただの友達だよね？」
「そうだよ。ただの友達で悪いか」
これ以上つっこんだら、なんか、気にしてるみたいじゃん。
そんなの俺っぽくなくない？
そう思ったら、もう聞きたくなくなった。
「......うわー！」
クラの頭越しに、元太が突然叫び声を上げた。
「やべぇ、行っちゃった！」
足元が狂ったのか、ボールが元太の元を離れ、スピードを上げて転がっていく。
ボールはそのまま渡り廊下を横断して、その向こう側へと消えて行った。
「ごめん、ちゃかちゃん！俺取ってくる！」
「あ、うん、頼む！」
元太がボールの後を追って行ってしまったので、手持ち無沙汰になったちゃかが俺らの元へやってきた。
息を弾ませるその顔は、ただの子供みたいで、将来がどうとか言っている自分がなんとなく馬鹿らしくなってくる。
「何回まで行けたの？リフティング」
「それが途中からわかんなくなっちゃって」
「元太数えてくんなかったの？」
「元太もわかんなくなったって。だからもう、数えるのとかいいかなって」
へへっ、と笑うとますます少年ぽくて、悩みとかあるのかなー、なんて思って羨ましくなる。
そういえば、ちゃかの悩みとか、聞いたことないな。
将来のこともそうだし、友達関係とか......恋愛とか？
「ねえー、」
少しして、元太がボールを蹴りながら戻ってきた。
「あっちにAさんがいたー」
そう言いながら、渡り廊下のほうを指差している。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年1月13日 22時
