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( ナカムラ
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「......っと、うわ、やべ!」
「うわぁ!」
「あぶねっ!......お、助かった!」
「よし、がんばれー!」
昼休みにちゃかと行ったカフェテリアでクラと元太にばったり会って、なんとなく一緒に中庭に出た。
すぐに誰かが忘れて行ったらしいサッカーボールを見つけて、リフティング対決を始めたちゃかと元太。
俺とクラは、ベンチに座ってそれを眺めながら、ダラダラと話していた。
「元気だねー、あいつら」
「ほんとにね」
「気が合うようで」
「なー」
キャッキャと盛り上がっているふたりを他所に、お互いテンションの上がらない俺とクラ。
腹いっぱい詰め込んだランチの後だし、低めの予想気温のわりに日差しのあたたかい午後だし。
ついでに眠気もやってきて、次の講義なんてさぼっちゃおっかなー、なんて発想にもなる。
いろいろとひとりで考えたいことも、あるっちゃあるし。
「クラはさー、将来どうなりたいとかある?」
ふと思いついたまま言うと、クラは訝しげに俺を見た。
「は?何いきなり」
「いいから。なんかある?」
「うーん......」
俺に言われた通り、素直に考え始めるクラ。
本当、裏表なくて扱いやすいやつだよなー、なんて。
「将来っていうか......ずっと前から思ってたのが一個あったんだけど、つい最近ダメんなった」
「え、何なに?」
「ヤダよ。おしえねー」
「えー、何だろう。何系?」
「だからおしえないって。そういうおまえはどーなんだよ」
「俺はねー、......」
そこまで言って頭に浮かんだのは、Aちゃんの顔だった。
確かに俺は、最近、将来のことを真剣に考えるようになった。
そんなに興味もないモデルを続けているのだって、専門学校の学費の足しにでもなれば、という思いがあるからだ。
だからと言って、大学を辞めるかもしれないなんて......なんであんな話しちゃったんだろう。
殆ど誰にもしたことなかったのに。
急にあんなこと言われても、Aちゃんだって困るに決まってる。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時