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「ハッキリ言ってもらえなかったら、ずっと松倉のこと傷つけたままでいたかもしれない」
「傷ついてなんか......。俺が勝手に好きになっただけだし」
「松倉って昔からそうだよね。そうやって何かあると、絶対、自分の責任みたいにするの」
「だってそうじゃん。俺が勝手に好きになって、勝手に追っかけて、勝手にふられて......」
......あ、俺、ふられるんだ。
自分で言っておきながら、自分の言葉にショックを受けた。
今までは、なあなあに流されて終わってきた。
そのおかげで、叶わなくとも、好きでいられた。
今日こそちゃんとした言葉で、ちゃんとした態度で、Aにふられるんだ。
そう思ったら......情けないけど、泣きそうになった。
「こんな私のこと、好きになってくれてありがとう。......いつも本当にありがとう」
それってどういう意味?
そう聞きたかったけれど、言葉にならない。
「松倉には何でも話せるし、私にとって本当に大切な存在だよ」
「友達として、......ってことだよな」
「......そういうふうに見てなかった、って言ったと思うけど......ごめん、それは本当にそうなの」
「そっ、か......」
「でも大切なことには変わりないよ。今はそうとしか言えない......ごめんなさい」
大丈夫。
大丈夫。
そのための覚悟だから。
自分で自分に言い聞かせて、唇を噛み締める。
他人の気持ちばかりはどうにもできない、って、わかってるつもりだし。
「......海人は?」
「え?」
「海人は......Aにとって何なの?」
「......わからない」
「わからない?」
「うん。16年間ずっと想い続けてきた人だけど、また会えるようになってから少ししか経ってないし、なんていうか......まだ知り合ったばっかりっていう感覚しかないから」
「そっか......そうだよな」
それでも、6年間ずっと近くにいた俺よりは優先度が高いんだろうな。
仕方のないことだけど、正直言って、やっぱり寂しい。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年1月13日 22時