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( ﾏﾂｸﾗ
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中庭に降りて、すぐにベンチに座っているAを見つけると、心臓がドクンと脈打った。
「......あ、松倉」
「よぉ」
近寄る俺を見つけて、ニコッと微笑みかける。
その顔だけを見れば、いつも通りのAだ。
いつも通りじゃないのは、こうして待ち合わせるのにちゃんとした目的があるということ。
出会ってから一度もケンカなんてしたことのない、俺ららしくない目的が。
「ごめんね、わざわざ」
「うん。俺のほうこそごめんな、先に連絡させて」
「そんなことないよ」と、微笑んだまま首を横に振るA。
この優しさがあったからこそ、俺もきちんと向き合う覚悟ができた。
いつまでもこのままじゃいけない、って自分でも思ってた。
いつまでも叶わない恋に縛られていてはいけない、って。
だから......そう。そういう覚悟。
「えと.......こないだは、」
「こないだはごめん！」
Aの言葉を遮って言うと、Aはキョトンと目を丸くして俺を見た。
「俺が悪かった」
「え......」
「一方的に言いたいこと言って、全部Aのせいみたいな感じにして......本当、ごめん」
「でも......私のせいだもん」
「そうじゃなくて、」
夕暮れどきの中庭。
静かかと思えば、部活やサークルに急ぐ誰かの声と足音が響く。
いろんな音が混ざり合う中で、この空間だけは、緊張感が張り詰めていた。
「Aのせいにしたかったわけじゃなくて......」
「ハッキリ言ってもらえて、私は良かったと思ってるよ」
そう言ったAの笑顔は、やけに清々しかった。
こういう凛としているところ、やっぱり昔から変わってない。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年1月13日 22時
