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何て言っていいかわからずに黙ってグラスを見ていると、戸惑う私に気づいたのか、紫耀くんは悪気のない顔でニコッと笑った。
「あ、ごめん。間接キスになっちゃったね」
「...だね...」
「ま、直接キスもしちゃった仲だけどね」
「.....」
悪戯っぽく見つめられて、途端に顔が熱くなった。
そうだった。
海ちゃんの部屋で３人で飲んだ日、紫耀くんに迫られて...直接してしまったんだった。
あのときは半分酔っていたからよかったものの、今になって思い出すと、恥ずかしすぎる。
あの日の私はどうかしてた。
岸さんとのことがあって、心が不安に満たされていて、とても普通じゃなかった。
あのまま海ちゃんが起きなかったら、私たち...どうなっていたんだろう。
「そうだ。やっと見つけたんだよ」
私の複雑な心中には気づく様子もなく、紫耀くんが言った。
何かを検索しているのか、スマホに向かって「あったあった」と呟いて。
「前に言ってた、おいしいカフェオレを出してくれるお店」
「そういえばまだ行ってなかったね」
「よかった。覚えててくれた？」
「うん。もちろん」
「ここはどう？」と見せられたスマホの画面には、清々しい緑色に溢れた林の中に、ポツンと佇む小さな別荘のような建物の画像があった。
この画像だけでは、周辺がどうなっているのかはわからないけれど、こんなところにカフェがあるとは、通りかかっただけでは気づかなそう。
「これ、カフェなの？」
「そうそう。なんかすごいでしょ？この写真、まるで絵本みたいだよね」
「うん、行ってみたい！...けど、遠いのかな？」
「車じゃないと行けないみたいだね」
任せておいて、と言わんばかりに、紫耀くんは私を見てニコッと微笑んだ。
紫耀くんと言えばドライブ、みたいな感じだから、その笑顔の意味を、私もすぐに理解した。
カフェのために遠出するっていうのも、なんていうか、悪くない。
車内での紫耀くんとの距離感には、まだドキドキするけれど...
何より、このカフェに心惹かれている自分がいる。
「じゃあ、いつがいい？」
「ええっと...あ、」
スマホでカレンダーを見ながら言う紫耀くんに合わせて、私もスマホを手に取った。
ふと、その肩越しによく知っている人の姿を見つけて、画面に触れようとしていた手が止まる。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月29日 23時
