その矢印を、僕に向けて #4 (ページ18)

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( Nagase

" 今日はありがとうな。"

メッセージが返ってくるまでの間、そわそわ、落ち着かなくて。

近所のコンビニで意味もなく立ち読みをして、気を紛らわせたりして。

そうしているうちにスマホの通知が鳴って、見れば、待ち人からの返信。

" こちらこそ。楽しかったね。"

" 今帰ったん？"

" お風呂入ってた。すぐ気づかなくてごめんね。"

" えーよ、全然。"

「車で寝ちゃっててごめん」とメッセージが続いて、つい、紫耀の顔が浮かんだ。

俺のマンションに着いたとき、それでも起きないAを見て、「寝かせておいてあげよう」なんて紫耀が言うものだから、結局別れの挨拶ができなかった。

自分が降りた後ふたりきりにさせるのがどうにも気がかりで(しかも車の中という密室)、部屋に入ってからも、モヤモヤが止まらなかった。

何かとんでもないことが起こっていなければいいな...

そんなことをひとりでごちゃごちゃ考えていたけれど、まあ、いくら紫耀とはいえさすがにそれはないか。

" 気持ちよさそうに寝とったなぁー。"

" 寝顔晒してしまって恥ずかしい...。"

" 大丈夫大丈夫。口は閉じてたで？"

" そっか。それならまだいっか。"

照れた女の子のスタンプが押されて、部屋でこんな顔をしているのかと思うと、愛おしくなる。

話したいな。

ふと思いついて、コンビニを出て電話をかけた。

コール音が鳴るとすぐに出て、「おつかれさま〜」と少し気の抜けたAの声が流れてくる。

「なんかまだ眠そうやなぁ」

『お風呂入って眠気覚めると思ったんだけどね』

「まあ疲れたんちゃう？買い物しててけっこう歩いたしな」

『そうだね。...ね、廉くん、今どこ？外？』

「そう、外...」

話しながら歩いて、無意識に、Aのアパートの前まで来てしまった。

部屋に入ったことはないけれど、話に聞いていた通りの外観だから、ここに違いない。

ふと顔を向けた大通りに救急車が駆け抜けて、サイレン音がスマホの向こうからも反響した。

俺の居場所、気づかれただろうか。

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