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「みんなで交換するのとは別に渡したかったんだ」
「えっ...と...」
「受け取ってくれる？」
条件反射的に手が出て、箱を手渡された。
軽いはずのその箱は、リングを受け取ったときよりも更に重くて、嬉しさよりも戸惑いが勝つ。
「どうして...？私、紫耀くんに何も用意してないよ...」
「いいよ、そんなの。俺が渡したかっただけだから」
「でも...」
箱の重みに耐え兼ねて、心が拒否している。
これを受け取ってはダメだと。受け取れないと。
「......ごめんなさい」
紫耀くんの大きな掌を掴んで、箱を乗せ返した。
驚いて目を丸くした紫耀くんは、「なんで？」と言葉に出さずに私を見る。
「ごめん...受け取れない」
「...廉からのプレゼントは受け取ったのに？」
紫耀くんの目が、不服そうに揺れる。
やっぱり...紫耀くんにはバレていたんだ。
「俺よりも廉が好き？」
「そういうわけじゃ...」
「じゃあ、何？」
「だって...私、紫耀くんにはもらってばっかりだもん」
カフェオレのおいしいお店を調べてくれた。
そこへ行くために車を出してくれた。
アウトレットモールまで連れて行ってくれて、プレゼント交換を提案してくれた。
助手席で寝ちゃったのに、全然怒らないでいてくれた。
今日の一日だけでも、こんなに与えてくれた。
それだけじゃない。
紫耀くんは、いつだって澱みのない気持ちを届けてくれた。
その愛情で、私を守ってくれていた。
「私は紫耀くんに何もしてやれてない...」
「...そう思うんなら、受け取って」
紫耀くんはそう言うと、私のバッグの中に箱を放り込んだ。
「Aちゃんも疲れたでしょ。今日はゆっくり休んでね」
「...うん...」
「それじゃ、また学校でね」
促されるまま、車を降りた。
小さくなるテイルランプを見送って、溜息が漏れた。
部屋へと繋がる階段を登る私の足取りは、いつも以上に重かった。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月29日 23時
