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認めるのが怖くて、すぐに返事をすることができなかった。
車の中で思わずしてしまったあのキスに、胸が震えた。
あの後、何度も思い出しては苦しくなって、またすぐに会いたくなって。
戻ってきてほしい。
そんな身勝手な言葉が、喉の奥に引っかかっている。
それを伝えたからといってどうなるわけじゃないけれど、伝えてしまったら、全部が終わる。
なのに...こうしている今も、「好きや」と、心が叫ぶ。
「どうしたらいいかわからへん。でも...」
「うん」
「ふたりのこと壊したいなんて思ってへん。まだ好きやけど、丸のことも大事やし、丸もそう思ってくれてるの、わかってるし...」
「そうやな...」
「忘れなあかんってわかってる。もうどうにもならんことやって。でも...やっぱり俺...Aがええねん...」
気づいてしまった。
久しぶりに会って、ピアスを返されたあの日。
ずっとずっと会いたかったと、話がしたかったと。
たとえ一方通行でも、この気持ちは今でも変わっていないのだと。
「つらかったな...大倉...」
「笑ってまうよな、こんな話...」
「いや...よう話してくれたな」
安の言葉には、自分勝手に痛めた心を労われたようで、素直に救われた。
それだけでも、話してよかったと思う。
「俺もな、こないだ丸んち行ってん」
「へえ、そうなん」
「Aちゃんも一緒に飲んで...気にしとったで。おまえのこと」
「え...」
「大倉と丸は仲良おやってんのか、って。俺に聞いてきてん。勿論、丸おらんとこでやけど」
その場面はなんとなく想像ができて、複雑な気持ちになる。
俺と丸に挟まれて一番悩んだであろうAが、何も気にしていないわけがない。
「Aちゃんもわかっとるで。大変なことやって。それでも覚悟決めて一緒におるんやと思う」
「うん...そうやな」
「何が正解かはわからへんけど...Aちゃんを不安にさせるようなことは、したあかんよな」
「ほんまに。その通りやと思う」
「今一緒におってくれる人のこともやで？」
確かめるような安の言葉に、しばらく見ていない、彼女の顔が浮かんだ。
やらなければいけないことが、山のように積もっている。
かわいい後輩たちのお世話も、村上くんに預けっぱなしのピアスも、何も知らない彼女とのこれからのことも。
全部が中途半端で、嫌になる。
さて、何から手をつけようか。
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続く
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月23日 22時
