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丸のことだから、俺の気持ちを見抜いて、身を引いたのだと思う。
そして、丸のことだから、Aの自分への気持ちには１ミリも気づかなかったのだと思う。
ちょうど仕事が立て込んできたのも手伝って、丸とAの会う頻度が徐々に少なくなり、そうしてほんの少し生まれた隙に、俺が入り込んだ。
AがOKしてくれたことに一番驚いたのは、他の誰でもない、この俺自身だった。
「俺が割り込んだせいで、丸も、Aも...ずっと我慢させてたんやと思う」
「そんなん...だって、２年やろ？Aちゃんやって、全然気持ちがない相手と２年もつき合ったりせえへんよ」
「...そうなんかな...」
つき合っていた２年間、楽しいことも幸せなこともたくさんたくさん、あった。
俺はますますAを好きになったし、Aもそうなってほしいとずっと願っていた。
実際、まっすぐで優しいAからの愛情を、まったく感じなかったわけじゃない。
俺を好きでいてくれている、と確信できる瞬間も、２年のうちに幾度となくあった。
でも、結局。
最初に抱いた焦りは、そう簡単には拭えなくて。
堪え性のない俺は、Aの心がまるごと俺のものにはならないことに、とてもじゃないけれど耐えられなかった。
「...それで、今の彼女さんと...」
安が悲しそうに言った。
どんなに情けないことをしてきたかということは、自分でもよくわかっている。
「なんかもう、最低やな。俺」
「そんなこと...」
「あのふたりは本来の姿に戻っただけやねん。強いて言うなら...もともと丸のもんやったAを、あるべき場所に返しただけやから」
いつのまにか空になっていたグラスに、安がまた一から酒を作り直してくれた。
思っていたより酔わなくて、飲むほどに何故か冷静になっていく自分がいる。
自分の分も作り終えてひと口飲むと、安が言った。
「...これからどうするつもりなん？」
「どう、って」
「それでも好きなんやろ？...後悔してるんやろ？」
「.....」
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月23日 22時
