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「俺でよかったら何でも聞くで？」
「...安にはお見通しやもんなぁ」
昔から、そう。
安の「何でも聞くで」には、いつも、心の鎧を剥がされてきたんだった。
半年前から少しずつ生まれていった"誰にも見せてはいけない感情"が、澱(おり)のようになって、いつのまにか心の底に蓄積されていった。
ワインならば、いい時間を重ねてきた証になるけれど、俺のこのモヤモヤは、そうじゃない。
この際、酒の力をちょっと借りて、取り除くことができるなら。
安の優しい眼差しに、そんな希望を見出さずにはいられなかった。
「...さっきわからへんって言うたけど、」
「うん」
「まだ好きやと思う...俺...たぶん」
「...うん」
「まだ...受け止め切れてへんと思う。別れたこと...」
半年以上経ってもまだ、俺だけがそこに留まったまま。
あのふたりはとっくに先に進んでいるというのに、俺だけが、変われずにいるままだ。
「でもな、最初っからわかっててん。俺なんか最初っから勝ち目ないって」
「それ、さっきも言うてたな。もともと丸のほうが...とか？」
「うん。...安も気づかへんかった？」
同時に出会った俺らは、最初こそ、全員フラットな関係だった。
４人で飲むこともあったし、都合に合わせてそれが３人になったり、ときにはふたりになったりした。
そのうち、俺はAだけを誘うようになり、Aへの特別な想いを募らせていった。
「つき合ってほしい」と告げるタイミングが自分でも予想外に早かったのは、丸への密かな焦りがあったのだと思う。
「あいつ、最初からほんまは丸のほうが好きやってん。丸の話ばっかりして...丸のことばっかり見て...。俺のことなんて見向きもせえへんかった」
「確かにAちゃん、丸によお懐いてたんは覚えてる...けど...」
「丸やって同じやったと思う。男同士やし、そんなん見てたらわかるやん？」
「まあ...うん...」
「でも、たぶん...俺も惚れてもうてることに気づいたんやと思う。それで...」
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月23日 22時
