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( t.o
*19の続き。
安の家に入るのはいつぶりだろう。
若い頃みたいに、単なる友達感覚で上がり込むこともなくなった。
こんなことでも起きていなければ、そういう機会はそうそうなかったかもしれない。
「これでええかな」
キッチンでグラスを掲げて安が言う。
「なんでも」と答えると、安は冷蔵庫を開けて中を物色し始めた。
カラン、と氷をグラスに入れる音がする。
「あ、俺ポップコーン食べたい」
「えー、ちょお待ってな」
「味は何でもええねんけどー」
氷入りのグラスに、途中で寄ったコンビニで買った焼酎とソーダ、それに冷蔵庫にあったレモンを絞って入れる。
突然のオーダーにも関わらず、いい感じの器に盛られたポップコーンがすぐに到着して、急きょ計画されたささやかな酒盛りが始まった。
「なんか懐かしいな。こうやって飲むの」
「せやな。昔はよく行き来してたんやけどな」
「また一緒に買い物とかも行きたいよなぁ」
俺が言うと、よく遊んでいた当時のことを思い出すのか、安はニコニコ笑って頷いた。
「安は最近行けてる？俺、全然やわ」
「プロデュースとか始まってからいろいろ大変やもんなぁ」
「そうそう。家に籠って作業すんのが増えたもん。昨日も気づいたら明け方になってて」
「そっか...そんなんやったらろくに彼女さんの相手もできひんなぁ」
あまり考えたくない話題だったけれど、安に悪気はまったくないのはわかっているので、俺も悪気なく、素直に答えた。
「あー、まあどっちにしろ最近会えてへんからな」
「そうなん？元気にしてんの？」
「...たぶん」
「たぶん？」
「バタバタしとってあんま連絡も取れてない、っていうか...」
取る気がない、というか。
皆まで言わずとも察してくれたようで、特に追及してくることもなく、安は頷くだけだった。
「まあ、大倉にもいろいろあるんでしょう」
「そういうことにしといて」
「はは。...で、俺から聞いたほうがええの？」
「ん？」
「なんか吐き出したいことがあるんちゃう？」
それでいて、いきなり核心をついてくるのもまた、安らしいところで。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月23日 22時
