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( s.y
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気取られないよう、そーっとそーっと近づいて、考え込んでいるその背中をポンと叩いた。
「おーおーくーらーくんっ」
「わっ...びっくりしたぁ」
大倉は目を丸くして振り返った。
俺の顔を見て「なんや、安かぁ」なんて言いながら、ほっとしたようにニコッと笑う。
「随分集中しとったなぁ。何してたん？」
「んー、ちょっと後輩ちゃんたちのことで...」
「あぁ、次のライブのやつかぁ」
手元にはスマホとペンとノート。
真っ白いページに、走り書きのようなメモが、いくつも記されている。
大倉は後輩のプロデュース業が板についてきて、こんな瞬間が増えてきた。
楽屋の隅で、ひとり眉間に皺を寄せて考える姿。
ずっと昔から知っている間柄の俺としては、その大きくなった姿が頼もしい限りで、微笑ましくもあった。
「ファンのみんなに喜んでもらえるとええなぁ」
「うん。久しぶりやし、いろいろサプライズ的なんも入れたいなーって思ってて」
「へえ、どんなん？」
「...大倉」
大倉の話を聞いてワクワクする俺の気持ちを、不意に背中にかけられた低い声が制した。
ふたりして同時に振り返ると、俺らの後ろに横山くんが立っている。
少し怖いくらいの、真顔で。
「ちょっとええか」
「ん。何？」
「おまえ、こないだの金曜の昼過ぎ頃、何してた？」
捲し立てるように言う横山くんに、キョトンとする大倉。
「え、何なん急に」
「ええから。金曜の昼過ぎやで」
「金曜...？」
「どこおったん？」
"何してた"から、"どこにいた"に質問が変わった。
その途端、何かに気づいたのか、大倉は急に表情を変えた。
大倉の様子で何かを察知した横山くんは、そのまま話を続ける。
「おまえ、なんであのマンションにおったん？」
「.....」
「見た人がおるんやで。あのマンションの駐車場に、おまえの車が停まってたって」
「それは...」
「助手席に女の子が乗ってたって言うてたけど...どういうことなん？」
助手席に女の子？
女の子と車に乗ってたってこと？
女の子って...誰？彼女じゃなくて？？
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作者名：えみゅ | 作成日時：2022年10月23日 22時
