34 ページ27
*
*
*
仕事終わりの深澤くんと落ち合って向かったのは、いつもの場所。
つい最近会ったばかりの玉森くんは、相変わらずただ「いらっしゃい」と受け入れてくれるばかりで、余計なことは何も言ってはこなかった。
たぶん、黙ってくれているだけで、本当はいろいろと気づいてるんだろうけど。
「海人、ビールでいい?」
「あ、はい」
「奢るわ」
「ビールふたつ」とソファー席から声を上げる深澤くんに、カウンターの奥で「おっ」という顔をする玉森くん。
先輩らしい振る舞いを照れ臭く思ったのか、「仕事の打ち上げなんだよ」と微妙にズレた言い訳をして、ハハッと小さく笑う深澤くんは、いつも優しい。
この人のことを疎ましく思わずに済みそうで、良かった。
俺の勝手な、幼稚な嫉妬で、この人のことを悪者にしなくて本当に良かった。
敵わないと思う気持ちは変わらないけれど、それで子供みたいに拗ねて拗らせるのは、もう終わり。
今夜は、ちゃんと、話をしよう。
「そいじゃ、おつかれー」
「お疲れ様でっす!」
考えてみたら、もともと友達だった人と同じ仕事をすることになるなんて、そうないこと。
俺や深澤くんだけでなく、ここで会う仲間たちは、苦労話はあまり話さない。
ましてや、楽しい時間を共有するために繋がっている間柄。
仕事のことで深い話をするのも、これで最後かな.......なんて思っていると、感慨深げな表情で深澤くんが言った。
「これで海人の会社に行くこともなくなるんだなー」
「あ、俺も今似たようなこと思ってました」
「寂しくなる、っていうとなんか変だけどさ」
「ですね......でも、近くに来たときは寄ってってくださいよ」
「だねー。Aちゃんが頑張ってる姿もまた見たいしね」
なんてことないような顔をして深澤くんは言った。
俺はというと、少しは心構えをしていたつもりだけど、Aの名前を出されると、いまだにドキッとしてしまう。
心の中を見透かされているような気さえしてきて、つい、見えないバリアを張ってしまいたくなる。
でも、今日はそういう日じゃないから。
.
90人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えみゅ(プロフ) - ayaさん» ありがとうございます⭐️私もこのメンバーが好きで...またいつか書きたいなぁと思っちゃいました。虎といるときとはちょっと違ううみくん、かわいいですよね(^^) (4月30日 9時) (レス) id: bb58f65b86 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした!HGLのとくに好きな仲間たちだったので嬉しかったです☺️うみくんの後輩力は素晴らしいですよね!可愛がられる素質があるというか!そんな可愛らしさもお話にぴったりでした✨ありがとうございました! (4月29日 10時) (レス) @page43 id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えみゅ | 作成日時:2024年3月7日 22時