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「あ......お疲れ」
「Aちゃんならうちにいるよ」
「えっ？？」
思いがけないしめの言葉に、心臓が跳ねる。
「探してるんでしょ？」
「そう、だけど......」
しめが玄関前の廊下に出てきて、そっとドアを閉めた。
「コンビニ行こうと思ってドアを開けたら、Aちゃん、自分ちの前でぼろぼろ泣いてて」
思わず声をかけると更に泣き出して、そのまま放っておくこともできず、とりあえず部屋に入れたらしい。
Aはきっと、しめの顔を見てほっとしたのだと思う。
しめは、優しい空気に溢れた人だから。
「そっか......」
居場所がわかっただけでも良かった。
そう思うと、安堵の深い溜息が漏れた。
もう会えないかもしれない。
一瞬でもそんな考えが頭を過って、怖くてたまらなかったから。
「ごめんね、勝手に家に入れて」
「いや、全然......むしろ助かったよ。どこに行ったか見当もつかなかったから」
「喧嘩でもしたの？」
「喧嘩というか.......」
そこまで話して、はっとした。
Aとの関係が、しめにバレてしまう。
焦って次の言葉を見失う俺に、しめは優しく微笑んだ。
「俺、気づいてたよ」
「へっ？」
「キャンプのときにね。見てたらすぐわかっちゃった」
「え......えぇっと......」
「だからもう隠さなくていいよ」
さっき凍った背筋に、今度は冷や汗が流れる。
まさか、気づかれていたなんて。
「Aちゃん、うちでもずっと泣いてるし、もう少し落ち着いてから話を聞こうと思って様子見てたのね。そしたらスマホが鳴ったの。俺、もしかしてちゃかかなって思ったんだよね。だってAちゃん、その画面を見て無視したから」
「無視......」
「きっと喧嘩でもして、ちゃかが探してるんだと思ったの。で、玄関を開けてみたら.....大当たり」
「......本当、迷惑かけてごめん」
誤魔化すのは諦めた。
今はそんな気力もないし、こうして親切にしてくれた人に対して嘘をつくのは違うと思った。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年5月25日 21時
