. ページ36
.
「......つき合ってるわけないじゃん」
「元太はそう言ってた」
「うみくんのカフェで偶然会って、指輪を見られたの。それで誰からもらったんだって聞かれて、誤魔化そうとして、咄嗟に松倉くんの名前を......」
「咄嗟に出てくるのが松倉なんだ？」
必死に繋いだ説明を高速で打ち返されて、返すべき言葉が出てこない。
「......松倉と話させて」
キッチンから出た海斗は、ソファーに伏せていた私のスマホを指差した。
「俺、連絡先知らないから」
「どうして？松倉くんは関係ないでしょ？」
「関係あるよ。全然ある」
そうだ。
私が松倉くんを巻き込んでしまったんだ。
だから......松倉くんを守らなきゃいけない。
「勝手なことしてごめんなさい......でも松倉くんは何も悪くないから。話したいことがあるんだったら私から伝えとく」
「俺は話しちゃダメなの？」
「......私が話すから」
「そんなに松倉のことが好きなんだ？」
「どうしてそうなるの......？」
私はそんなこと言ってない。
悲しいのと、悔しいのと、言いたいことをうまく伝えられない憤りとで、顔が熱くなる。
どうしてこんなことになっちゃうの。
海斗と喧嘩なんて、したくないのに......。
「松倉くんのことは好きだよ。でもそういうんじゃない」
「松倉はそう思ってないかもしれないのに？」
「......海斗は？」
「俺？」
「海斗は私のこと、本当に好き......？」
何度となく思ってきたし、不安になるたび、何度も尋ねてきた。
本当に私のこと、愛してる？
私があなたを愛してるみたいに、私のこと愛してくれてる？
そんな疑問を持つことがそもそも悲しすぎるのに、口に出すと、もっと悲しくなる。
「海斗は自分から好きって言ってくれない。愛してるって言ってくれない。抱きしめてキスしてくれるけど、ただそれだけ。私のこと、いつまでも子供だと思ってる」
「そんなこと......」
「結婚したときだって.......そうだったよ」
熱くなった頬に涙が走って、冷たくなる。
「私が結婚してってお願いしたからしてくれただけ.......。本当に私と結婚したかった？結婚してよかった？」
「......俺のこと信じてないの？」
「海斗だって私のこと信じてない」
「違う。俺はただ......」
「ただ......何？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えみゅ | 作成日時：2023年5月25日 21時
