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「それじゃあ、お疲れー」
「お疲れ様でした。また近々!」
「うん!またねー」
七五三掛さんが部屋に入ったのを確認して、それから、前後左右、不審な人の目がないこともしっかり確認して。
すべて納得できたところで、玄関のドアを開けた。
私の後について、まったく無駄のない動きでするりとドアをすり抜けた海斗は、まるで忍者みたい。
こんなことが日に日に上手くなっていくのも、どうかと思うけど。
「はー。お疲れ様」
リビングに入り、海斗はソファーの上にどかっと体を横たえた。
二日間運転手として働いてくれた疲労具合は、相当なものだったと思う。
「運転ご苦労様。疲れたでしょ。何か飲む?」
「Aのほうこそ、料理担当ありがとね。あんなたくさん、大変だったでしょ」
「まあね。でもみんな残さないで食べてくれたから良かった」
「うちでもまた作ってね」
「うん」
寝そべりながら私を見上げてくる甘えた目に微笑み返して、キッチンへと入る。
何があったかと思い出しながら冷蔵庫を開けると、買い置きしておいた缶ビールたちと目が合った。
時計を見ると、時間は夕方前。
うみくん、それから七五三掛さんの順番に送って行って、私たちは今日はもう、外へ出る予定はない。
「コレでいい?」
目が合ったひとつを掲げて見せると、海斗の目が輝き出す。
「え、いいの?」
「うん。二日間、頑張ったしね」
体を起こし、私の手からビールを受け取って、いそいそと栓を開ける。
噴き出した泡を無邪気に啜って、海斗は本当に心地良さそうに笑った。
海斗が私の部屋で過ごすのは久しぶりだった。
夏休みといっても相変わらず忙しい海斗だから、無理に予定を詰め込むよりも、家で過ごす時間を多めに取ろうと話し合って決めた。
テストが終わった途端いろいろなことが起こって、ゆっくり話す機会もあまりなかったから、こんなふうに緩いくらいがちょうどいい。
海斗のこういうリラックスした姿を見られるだけで、私は心底ほっとできるし。
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年5月25日 21時