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「これ......如恵留くんに」
見つかってしまったらもう仕方がないので、半分ヤケになってブーケを差し出す。
「俺に？」
「あのね。いつも通る道にお花屋さんがあってね。そこのお花がすっごく綺麗で、」
「うん」
「どれも本当に素敵だったんだけど、そのお花が如恵留くんにぴったりだなと思って」
「うん」
「いつか如恵留くんにお花を贈りたいってずっと思ってたの。男の人にお花を贈るって、変かもしれないけど......」
「変じゃないよ」
「でも、私の気持ちなの。いつもありがとうっていうのと、大好きっていうのと、それから......」
「それから？」
必死に話し続ける私の手から、如恵留くんがブーケを受け取ってくれた。
そのまま、さっきみたいに両腕を伸ばしてきて、今度こそぎゅっと抱きしめられた。
「それから、何？」
「えと......あれ？何だっけ」
「ふふ。ありがとう......嬉しいよ」
私を抱きしめる如恵留くんの腕から、胸から、如恵留くんの部屋の香りがする。
当たり前のことなんだけど、それを私が知っていることが、何より嬉しい。
「本当にありがとう」
そっと腕を離した如恵留くんは、愛おしそうな目でじっとブーケの中のお花を見つめた。
「白い薔薇。かわいいね」
如恵留くんをイメージして選んだ、白い薔薇。
仰々しいのも、反対にシンプルすぎるのも嫌だったから、アレコレ悩んで３本にした。
ちょっと不安になったりもしたけれど、いざ渡してみると如恵留くんに似合い過ぎて、これにして良かったと本当に思う。
そう説明しようとすると、如恵留くんが続けて話し出した。
「自分みたいなお花にしたの？」
「えっ......私？」
「純粋で、誠実で、かわいらしくて。Aみたいじゃない？」
何の迷いもなくそう言うあなたの笑顔に、私はまた恋をする。
「本当、俺にぴったりだね」
３本の白い薔薇の花言葉が「相思相愛」だということを、その後で知った。
如恵留くんが知っていたのかどうかは、敢えて聞かないでおこう、と思う。
fin.
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
