みせて / n.k ページ7
み せ て / n.k
「ありがとうございましたー」
店員さんの声を背に歩き出す、晴れた日の散歩道。
綺麗にラッピングされた小さなブーケを手に、半分緊張、もう半分はワクワクしながら、待ち合わせ場所へと向かった。
如恵留くん、どんな顔するかな。
男の人にお花をプレゼントするって、やっぱり変？
でも、あのお花屋さんの前を通るたび、いつも気になっていた。
如恵留くんを想って選んだお花を、いつか受け取ってもらいたい、って。
どんなときも優しい、私の恋人。
常に努力を惜しまず、大きく掲げた夢をひとつひとつ確実に叶えてきた、本当に素晴らしい人。
このお花に込めたのは、私の、如恵留くんに対する尊敬や感謝の思い。
それから、今までもこれからも変わることのない「大好きだよ」という、心からの気持ち。
喜んでくれるといいな。
如恵留くんだったらきっと......喜んでくれるはず。
うん。きっと大丈夫。
でも、ほんの少しだけ恥ずかしくて、怖い。
店員さんは親身になって話を聞いてくれた。
「外国では女性から男性へ贈ることもめずらしくないんですよ」と、ドキドキして弱腰になる私におしてえてくれた。
だけどこんなことに慣れていない私の頭の中では、さっきからずっと、期待と不安がぐるぐる回る。
そんな私のことなど構わず、手の中の綺麗なお花だけが、凛とした佇まいでそこにいる。
何でもない日の、いたって普通のデートの待ち合わせ。
そんなところに突然ブーケを持って現れたら......きっとびっくりするよね。
大人な如恵留くんには到底追いつけない、まだまだ子供な私の、精いっぱいの背伸び。
変なことするなぁ......。なんて笑われたら、どうしよう......。
緑色の樹々がどこまでも続く、春の並木道。
待ち合わせ場所のベンチには、既に如恵留くんが座っていた。
静かに近づく私には気づかずに、真剣な顔で本を読んでいる姿が絵になりすぎて、思わず足を止めた。
こんな完璧な人が、どうして私を選んでくれたのだろう。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
