. ページ6
.
そして、驚いたことが他にもあった。
私に声をかけてくれたこと。
向き合った後の照れ笑いがかわいいこと。
何より、一番は、話したこともない私のことを知ってくれていたこと。
今日だけでこんなにもたくさんの驚きをもらえて、ますます宮近くんのことが好きになった。
話したことはなくても、私がずっと宮近くんのことを見ていたこと。
それはさすがに知らないだろうなぁ.....。
そうしているうちに、音楽が、難しいと嘆いていた箇所に差し掛かった。
さっき失敗した振付を宮近くんが華麗に決めた瞬間、
「......あ！」
その顔。
私のめちゃくちゃ好きな顔。
もう......大好き。
そう思ったら、変な声が出ていた。
レンズ越し、私の声に気づいた宮近くんが、こっちに振り返る。
「......どうしたの？」
「あっ......ごめん。何でもない」
「何？なんか映ったの？」
「いや、えっと......」
私の大好きなあなたが映りました。
なんて、言えるわけもなく。
「ごめんなさい、本当に何でもなくて......」
「え？何なに？」
楽しそうに微笑みながら、宮近くんが近づいてくる。
「みせて」
私の手の中のスマホを覗き込もうと、顔を寄せられた。
額に汗を滲ませ、無邪気に笑う顔に、息が止まる。
「みせてよ」
「......あのねっ、」
ごまかさなければ、何か言わなければ、と焦って、つい聞いてしまった。
「どうして私に声かけてくれたの......？」
「えっ？」
「記録係。私、宮近くんと話したこともないのに......」
ああ......私、何言ってるんだろう。
隣の席に座るよりももっと近い距離が恥ずかしくて、もう、無理で。
思わず目を逸らしかけたとき、宮近くんの大きな目が私を逃すまいと、捉えた。
「話したことなくてもずっと見てたから。Aちゃんのこと」
「え.....、」
「知らなかったでしょ？」
今日知ったばかりのかわいい照れ笑いで、私の好きな人は、そう言った。
fin.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 208人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
