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もう会えないんだ。
もう好きでいちゃいけないんだ。
この声を聞くのも、あの笑顔を見るのも、抱き合ったときの温もりを感じることも。
全部もう、できないんだ......。
そう思ったら、流れる涙を止められなかった。
本当はどうしたいのかも、何のためにこんなことを言い出したのかも、自分でもわからなくなるくらいに、涙が止まらなかった。
「......海斗......ごめんね......」
『.......』
「私......ひとりで頑張ってる海斗の邪魔になるんじゃないかって、思って......それで......」
『Aが？俺の邪魔になる？』
「うん......海斗の夢のこと、応援してるはずなのに、いつも寂しくて......会いたいのに会えないのが、苦しくて......」
『......』
「いつか海斗にぶつけてしまいそうで......そしたら、きっと嫌われちゃうから......だから......」
『そっ、か......』
「そういうことか」と海斗は言う。
『A、勘違いしてるよ』
「え.....？」
『俺の夢って、叶えたらそこで終わりじゃないよ』
「.......」
『叶えて、その後もAと一緒に生きていく。そこまでが俺の夢だよ』
涙でぐしゃぐしゃになった目に映る海斗の顔が優しくて、また涙が溢れる。
『でも、ごめん。寂しい思いさせてるよな。いつも我慢させてて本当にごめん』
「そんなこと......海斗のせいじゃない」
『待ってて。今からそっち行くから』
「えっ？？」
唐突な言葉に驚いて、涙が一気に引っ込んだ。
壁の時計を見ると、もう「今から行く」なんて言えるような時間じゃない。
『急ぐから、着くまでに考えといて』
「えっ？ちょっと待って、」
『足ないけど......まあ何とかなるっしょ』
「え、やだ！いいよそんなの」
『よくない。Aを泣かせといて何もしてやれないとか耐えらんないもん』
「でも、」
『いいの！どうしても会いたいの、俺が』
真面目でまっすぐで、一度言い出したら聞かないのが海斗。
わかってたけど、こんなふうに言い切られたこと、今までにあったかな。
『だからもっとよく考えて。本当に俺と別れるのか』
「......」
『着いたら返事聞かせて』
「それじゃあ」と切られたスマホを見つめて、茫然とするしかなくて。
暗くなった画面に映ったのは、泣き跡と困惑で乱れた、ひどい顔。
でも、もう泣いていない。
きっと、私史上一番幸せな顔だ。
fin.
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
