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泣き顔を見られたくなくて、咄嗟に背中を向けた。
「うん......帰る」
「......ちょっと待って」
唐突にガバッと起き上がって、元太くんは私の肩に手をかけた。
「みせて」
「.......」
「ねぇ、こっち向いて」
「なんで泣いてるの?」と、真剣な声。
私は元太くんのほうを向けなくて、ずっと自分の膝の上を見ていた。
目を合わせたらどうなっちゃうかわからなくて、怖いから。
「ごめん......俺なんかした?」
「.......」
「Aを泣かせるようなこと......」
「.......」
「まじで。おしえてくれなきゃわかんないよ」
顔を見なくても、困っているのは声でわかった。
元太くんのそういう様子はあまり見たことがなくて、申し訳なさに、また涙が溢れた。
そんなに優しくしないでよ、私なんかに。
簡単に許す軽い女、って思ってくれてもいいんだよ。
そうすれば、諦められるかもしれないから。
そうでもしないと、ずっと好きでいてしまうから。
「A......お願い」
「......なんでもないよ」
「嘘。俺に嘘つかないでよ、寂しいじゃん」
元太くんのバカ。
もう、そんなこと言うのやめてよ。
「......元太くんには関係ない」
「は?なにそれ」
「いいから。ほっといてよ......」
「ほっとけるわけないじゃん」
もう何も言わないで。
私だけを見てほしいけど、今だけは、やめて。何も見ないで。
「ねぇ......泣かないでよ」
「.......」
「でないと俺......本気になっちゃうよ」
声が近づいてきたと思ったときには、もう、遅くて。
吐息が頬に触れて、私の耳を甘噛みした。
熱い舌が耳たぶをなぞり、体中に電気が走る。
「A」と、甘ったるい声が脳内に直接響く。
その瞬間、何もかもが、もう、どうでも良くなってしまった。
後悔したっていい。
たった数時間だけの愛でもかまわない。
やっぱり、私は......簡単な女だから。
fin.
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あのCMから妄想してみました。
全員分書こうかな?
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作者名:えみゅ | 作成日時:2023年3月25日 22時