みせて / k.n ページ16
み せ て / k.n
「ちょっと、ねえー。ちゃんと聞いてる？？」
甘えたように私の腕を掴む手を、丁重に払い退けて。
「聞いてるよ」と、うんざりする気持ちを隠すことなく答えると、うみは何事もなかったように「だからさぁ」と続けた。
「もー、まじで信じらんない」
「そうですか」
「だってAもそう思わない？ヒトのスマホを勝手にさぁ」
「はいはい、思う思う」
信じらんないのはあんたのほうだよ。
そう言ってやりたかったけど、こっちのことなんてずっとお構いなしだから、もう、何を言ったって無駄だ。
休日に家に呼び出されて、何かと思えば、唐突に始まったのは彼女の愚痴。
うみはいつだってそう。
自由気ままで、いつだって何だって、自分のペースで。
幼馴染の私のことなんて、たぶん、都合のいい御用聞きか何かだと思ってる。
「はー。愚痴ったらなんかちょっとスッキリした」
「あーそうですか。それは良かったですね」
「Aって本当、聞き上手で助かるわ」
「......ていうかさ、」
「ん？」とまるで何もわかっていない目で見つめられ、思わず溜息が出た。
「なんで私があんたの彼女の愚痴を聞かなきゃなんないわけ」
「だってAのほうが俺のことよくわかってるじゃん」
「......」
なんかイラついてきた。
人の気も知らないで、何をのんきなことを。
「そんなに嫌ならもう別れれば？」
「まあ、そこまで嫌ってわけでもないんだよね」
「今の愚痴、十分嫌そうだったけど？」
「えー。Aはそう思うんだぁ」
「もしかしてヤキモチ？」と笑って返されて、ぽかんとしてしまった。
「ま、独り身だから仕方ないか」
「はぁ？」
「元カレと別れてどれくらいだっけ？」
「......もうすぐ１ヶ月経つとこ」
「そろそろ次の彼氏が欲しくなる頃じゃない？」
「うっさいなぁ......」
腹が立って、思わずテーブルの上のお茶を一気飲みした。
それで収まるとも思えなかったけれど、うみに痛いところを突かれて、いてもたってもいられなかった。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
