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「......私、かわいくなんかないよ」
「誰がそんなこと言ったの？」
「誰かに言われたとかじゃないけど......」
「ねえ。こっち来て？」
龍也くんに手を引かれて、キッチンを出た。
「ちょっと待ってて」と言いながら、龍也くんは自分のバッグを開けて、何かを取り出した。
そのまま目の前に差し出され、見てみると、それは手のひらにちょうど載るくらいの、小さな箱。
「これね、プレゼント」
「私に？」
「うん。開けてみて」
ドキドキしながら箱を開けると、中にはピアスが入っていた。
それも、龍也くんの大好きな、いちごのチャームがついたピアス。
「取り寄せてたの、ちょうど今日入荷したみたいで」
「......さっきこれを受け取りに行ってたの？」
「うん」
「えっと......今日って、......あ！」
言いながら、大事なことに気がついて、はっとした。
龍也くんは「そう！」と頷いて、にっこり笑う。
「俺らが出会った記念日。忘れてたでしょ？」
「うん......ごめん......」
「ね。つけてみてよ」
急かすように背中を押されて、バスルームに行った。
大きな鏡の前に立ち、驚きでまだ震えている手で、なんとかピアスをつける。
深呼吸して見た鏡の中の私は、まるで違う自分のようで。
「かわいい」。そんな言葉が自然と口から出ていた。
私の耳たぶのすぐ下で、いちごがキラキラと揺れる。
「Aー？どーお？」
「えっと、.......うん」
リビングから呼びかけられて、おずおずとバスルームを出る。
待ち構えていた龍也くんは、私が一歩ずつ近づくたびに、どんどん笑顔になっていく。
「みせて」
「.......はい」
「やっぱりかわいい......！」
ストレートにそう言われて、顔が熱くなった。
と同時に、素直に嬉しくて、ちょっと照れ臭い。
「なんか......面と向かって言われると恥ずかしいね」
「ふふ。そう？」
「いつもは私が龍也くんに言ってる言葉だから」
言うのは簡単でも、言われるのは慣れてない。
苦笑いする私の手を、龍也くんがぎゅっと握る。
「いくらかわいいって言われてても、俺にはAのほうがずっとかわいい」
「うん......」
「で、Aは一番かわいくて一番大切な、俺のお姫様」
「これからもよろしくね」
そう言われて交わしたキスは、なんとなくいちごの香りがした......気がした。
fin.
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
