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「連絡係ありがとな、A」
「吉澤先生もね」
あのふたりのこと、べつに嫌いじゃないんだけど。
からかい半分で私に絡んでくるところ、吉澤先生には、あんまり見られたくない。
「おまえもそろそろ行ったほうがいいんじゃないの？」
「大丈夫。次、すぐそこの実験室だから。先生は？」
「俺は外。体育教師なんて外かココかしかないからね」
「外、かぁ......」
実験室から見えるかな。
運良く校庭側だから、窓から先生のこと、見れるかも。
あと数十分後、実験室の窓の外から見えるであろう先生の姿を妄想したところで、バスケコートのほうからボールが転がってきた。
「せんせー、ごめーん」
さっき松倉や松田と一緒にバスケをしていた男子たちが、一斉にこっちを見ている。
吉澤先生は無言でボールを拾い上げると、おでこのあたりに構えて、シュートするには確実に遠いゴールをめがけて、投げた。
「......うわ、すげー！」
コートの外からだというのに、ボールは寸分の狂いもなく、ゴールの網の中に吸い込まれていった。
男子たちはまるで試合に勝ったかのように沸き上がって、沸かせた張本人の吉澤先生はガッツポーズを決める。
「......先生、すごっ」
「どう？かっこよかった？」
「.......まあね」
私だけに向かって笑ったその顔が、あまりにかわいくて。
ついそっけない返事をしてしまって、すぐに後悔した。
まあね、じゃない。
すっごくすっごく、なのに。
だってずるいじゃん。
歳上のくせに、先生のくせに、そんな無邪気な笑顔。
まるで友達みたいに話せるあのふたりのことさえ、羨ましく思える。
私は意識しちゃって......そんなの無理だから。
「......ずや兄」
「ん？」
「って言ってたね」
「あー、松松ね。あいつら俺を教師と思ってないから」
「先生若いしね」
「そういやあいつらになんか言われてなかった？」
「え？」
「デート。してやれば？」
平然と言われて、胸にギザギザのヒビが入る。
こういう、オンナゴコロなんて何にもわかってない感じ。
悔しいけど、なんか、吉澤先生っぽい。
「......やだよ」
「えー。モテモテでいいなぁって思って見てたのに」
「先生だって......こないだ告られたじゃん」
私の言葉に、吉澤先生の顔色が変わった。
ヘラヘラ笑っていたのが、急に真剣な表情になる。
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作者名：えみゅ | 作成日時：2023年3月25日 22時
