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治遊佐に告白されたって、ほんまのこと?
軽やかな音に目を通して、少しだけ驚いた。
そのメッセージを送ってきたのはミヤオサムだった。
どうして知っているんだ、とか最近全然話してないな、とか色々考えて、途端胸が萎んだ。
ミヤオサムと話したのは、わたしが朝練の見学から途中で帰ってしまって、それを聞いてきた彼に冷たく対応してしまったのが最後だった。
あれからずっと疎遠になったのは、最早自業自得だと諦めていたのだが。ミヤオサムは特段気にしていないのか。
そうとしても、この質問はあれだ。恥ずかしくて自分で言えはしないけど、なんていうか、誤解を生んでしまうようなニュアンスが含まれている。気がする。彼はそれを分かっていないのか。
質問の内容も、どうしても言い澱んでしまう文脈。
それでも正直に答えれば、イエスだ。
沈んでいたときに彼に呼び出され、「付き合って」と。
ミヤアツムのこともあって、告白されたその瞬間は固まったのが事実。素直に嬉しい、とも思えなかった。わたしなんか、みたいな卑下とはまた別に、喉や心臓や手足がひりひりして。
明確な名前も捨て場所も見つけられないこの感情。
もしかしたらわたしは自覚している以上に、それに関してストレスを募らせていたのかもしれない。
遊佐くんのプライバシーもあるのに、気づいたら指が文字を並べていた。何も考えずの、数秒。わたしはこの会話をどうさせたいのか、自分でも分からなかった。
Aされた
治OKしたの
Aどうしてそんなこと聞くの?
我ながら、あまりに冷たい返答だった。
まるで同じ吹き出し、文字の形。なのにわたしが放ったその一行は、嫌になるくらい浮いていた。どうして、って。どんな返事があったとして、何もかも気に入らないで終わるくせに。
自分が嫌だった。
ミヤアツムとミヤオサムは別の存在だし、そもそもミヤアツムが直接わたしに何かした訳じゃない。ただわたしが勝手に裏切られた気分になって、勝手に気まずくなって、勝手に苛立ってるだけ。
逆恨みも八つ当たりもいいところだ。
一番の下のメッセージは削除しよう。それが最善。なのに何故かその動作までもがやるせない。全身を包む倦怠感。悲しいのかむかついているのか、自分が今どういう気持ちでいるのかも分からない。
やるせない感情に、スマホをベッドに投げた。
一拍。
「あ」なんて短い後悔を置いて、それは鳴り出した。着信音。
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しお(プロフ) - 大福丸◎さん» 遅れた所の話ではないほど返信が遅れてしまい申し訳ありません泣泣 本当に嬉しいです…今更になってしまいましたがコメントありがとうございました! (2022年1月23日 23時) (レス) id: 12c83b804f (このIDを非表示/違反報告)
大福丸◎(プロフ) - すごいよかったです!気づいたら3時間以上はこの小説読んでました笑 もー、本が出版されてたら買いたいレベルです!!笑 久しぶりにこんなにハマりました (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4787af4ccb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» いえいえ、こちらの配慮不足でもあるので......汗 こんな文章ばかりですが、良ければこれからもお読み頂けると嬉しいです! (2018年8月1日 20時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 了解です。何でもかんでも質問してすみません。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 9d036889eb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» 曖昧な部分でもあるので、難しい場合は読み流して頂けると嬉しいです (2018年7月30日 16時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しお | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=harushiomb37
作成日時:2018年5月6日 15時