#69 ページ27
期待してた訳じゃないのに。
いくらわたしを「好き」と言ったって、いくら上手に誤魔化そうたって、全部うそだって。わたしを好きって、それこそがうそなのに。
ああ、分かってたことじゃないか。
昨夜のまなの様子に感じた違和感、それも府に落ちて。すっきりしたではないか。やっぱりわたしは駄目だって、確認できたじゃないか。
なんて。
やっぱり、1年前とおなじだった。
「わたし」を呼びとめて「わたし」に告白した、クラスの男子。眩しい表情の中にまなは一切含まないで、わたしを「好き」と言った、クラスの男子。
ミヤアツムも、彼と同じようにわたしを見据えた。同じように「好き」と言った。
彼と同じように、わたしを傷つけた。
__知っとるよ。
わたしをわたしと認めてるような風にして、結局それは同情に過ぎないんだって、そういうことなんでしょ。わたしを見据えてるような「好き」も、所詮は。
可哀想って、思った? 俺くらいは気に掛けてやるよ、っていう親切?
それがどれだけわたしを傷つけてるかも知らないで。
知らないままで。綺麗な存在のままで。
知らないままで、わたしを「好き」って、言うんやね。
「あんたの妹ちゃん、侑くんと付き合うたんやて!?」
岡村の声は、響きはしなかった。
だけどクラスの喧騒に紛れて、遠くの、わたしだけが切り離されたところで、鈍く鳴った。
知っとるよ。
知っとるんよ。
期待なんてせんでも、わたしの行き先は決まっとる。
そこは幸せとはまったく掛け離れたところやってのも、わたしがその延長線上から落ちることはないってのも。
知っとるよ。
わたしが願うほど、世界は優しくない。気紛れやない。
それでもわたしが思うほど、世界は卑屈やない。理不尽やない。
知っとるよ。
ちゃんとわたしを見てくれてる人が居るのも。
両親、まな、岡村。他の子よりずっと少なくても、その価値は変わらんって。知っとるよ。
知っとるよ。
知っとるから、苦しいの。心臓が死にたがって叶わないの。
わたしだって、ミヤアツムみたいに生きたかった。
ミヤオサムみたいに生きたかった。
ふたりで、喧嘩もするみたいだけど、それでも仲良く。人前でそうしないでも、よく分かる関係に。
まなは言う。「うちらすごく仲良えよね」って。
わたしも言う。「せやね」って。
__違うの。わたしだけが、違った。
「Aさん、ちょっとええ?」
ああ。
また、知ってる声が降ってきた。
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しお(プロフ) - 大福丸◎さん» 遅れた所の話ではないほど返信が遅れてしまい申し訳ありません泣泣 本当に嬉しいです…今更になってしまいましたがコメントありがとうございました! (2022年1月23日 23時) (レス) id: 12c83b804f (このIDを非表示/違反報告)
大福丸◎(プロフ) - すごいよかったです!気づいたら3時間以上はこの小説読んでました笑 もー、本が出版されてたら買いたいレベルです!!笑 久しぶりにこんなにハマりました (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4787af4ccb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» いえいえ、こちらの配慮不足でもあるので......汗 こんな文章ばかりですが、良ければこれからもお読み頂けると嬉しいです! (2018年8月1日 20時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 了解です。何でもかんでも質問してすみません。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 9d036889eb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» 曖昧な部分でもあるので、難しい場合は読み流して頂けると嬉しいです (2018年7月30日 16時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しお | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=harushiomb37
作成日時:2018年5月6日 15時