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#58 ページ13

うわ、めっちゃキレーな子。


あたしのハンカチを持つ、華奢で白い手とか。少し伏せがちで、頬に影を落とす睫毛、瞳とか。さらさらと流れる髪、洗練とされた姿勢。何より、凛とした表情。

国民的女優やアイドルと比べたら、まあそこそこかなってくらいの可愛さやけども。
それでも、この子より「綺麗」って言葉が似合う女子は居らんのちゃうって。

春みたいな、けど自然故の汚さとかは全くない。ほんまに澄みきってた。



「あの、ハンカチ......?」


「、ああ、ごめん。ありがと」


我を取り戻したあたしは、彼女の手から慌ててそれを受けとる。一瞬触れた体温は思いの外冷たくて、漠然とやけど、この子ほんまに生きてんのかな。なんて思ってしまった。

それというのも、彼女の表情はさっきから1ミリも動かへん。

愛想笑いなんか端から求めてないけど、彼女は戸惑いに目を揺らすことも、怪訝に眉を寄せることもしない。ただ無機質にこっちを見据えてきて、なんていうんやろ、ちょっと怖い。

けど、なんでかなあ。心地好くもあった。


理由なんか分からんし、要らん。そもそもその感情が正しいのかも定かやない。何もかもがあやふやで、その曖昧な輪郭もなぞることままらない。

ただ、これだけはどっかで感じてた。

色々と意味不明な感覚。やけにゆっくりな心拍。全身に血液が回っているのが、よく分かる。



ああ。きっと、これが。運命。
彼女が、八重Aやったのも。あたしが岡村やったのも。茶髪にしとったのも。全部、『運命』。





Aが「ええ子」やったのも。

うん。

絶望的に、運命。







「岡村」

「んー?」

「ほんまに優しい子はさあ」

「......なに?」

「優しくいることに疲れたり、するんかな」

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しお(プロフ) - 大福丸◎さん» 遅れた所の話ではないほど返信が遅れてしまい申し訳ありません泣泣 本当に嬉しいです…今更になってしまいましたがコメントありがとうございました! (2022年1月23日 23時) (レス) id: 12c83b804f (このIDを非表示/違反報告)
大福丸◎(プロフ) - すごいよかったです!気づいたら3時間以上はこの小説読んでました笑 もー、本が出版されてたら買いたいレベルです!!笑 久しぶりにこんなにハマりました (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4787af4ccb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» いえいえ、こちらの配慮不足でもあるので......汗 こんな文章ばかりですが、良ければこれからもお読み頂けると嬉しいです! (2018年8月1日 20時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 了解です。何でもかんでも質問してすみません。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 9d036889eb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» 曖昧な部分でもあるので、難しい場合は読み流して頂けると嬉しいです (2018年7月30日 16時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しお | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=harushiomb37  
作成日時:2018年5月6日 15時

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