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八重妹の告白の真摯さ、それは侑自身も気づいているはずだった。
ミーハー的な感情なんて見えない、あの声。気づかない訳にはいかないだろう。
まあ、今しがたこいつが吐き捨てた侮蔑は、確かに彼女の配慮の無さにも当てられている。それに関して侑が怒るのも、分かるっちゃあ分かる。が、同情できない。
侑が八重妹を否定する一番の理由は、自分を正当化するためだ。
八重さんを好きになってしまった自分。八重妹に恋愛感情を与えてしまう行動をした自分。
侑は、その事実に困惑して、迷っている。
自業自得だ。
俺はそれに干渉するほど暇ではないし、何処かの誰かさんみたいなお人好しでもない。
「............待たんからな」
位置について、よーいどん。なんて、そんな純粋ごっこ。
「はあ?」
「俺、八重さん好きやから。今好きになったから。お前のことは待たん言っとんねん」
自覚しつつも、どこか輪郭がぼやけていた想い。
それを「恋」と名付けるのは、非道だと思った。潔白な八重さんを汚す気がした。だから、ぼやけていたというよりも、ぼやけさせていた。都合の良い正義。曖昧な行為で、誤魔化していた。
けどこうなった以上、認める他無いではないか。
八重さんが好きやから。
その言葉に、案の定侑は表情を歪めた。
次に吐かれる言葉は、大方予想がついている。
「はあ? 待つも待たんも、勝手に行けばええやん。俺には関係ないことや、」
ほらな。
俺には関係ない、って、そればっかしや。
「......八重さん、好きなんちゃうんか」
なんて、かく言う俺も何をやっているんだか。
「待たない」と宣言して早速、侑の歩に合わせるような真似。
俺がちっぽけな情を見せたところで、こいつが揺らぐことはない。
「好きな訳無いやん」
あんな、偽善ぶりっ子。
幾度と無く相手を傷つけてきた、悪態。
以前も八重さんに対して吐いていた、悪態。
語彙の欠如も遠慮の無さも、この期に及んでそれを咎めることはしない。
分かっている。
"俺がちっぽけな情を見せたところで、こいつが揺らぐことはない"。
けど、知っている。
今の侑の悪態に力が無かったこと。
__せいぜい葛藤でもしてくれよ。
俺は「ならええわ」とかなんとか言い残すと、そのまま体育館へ歩いていった。
侑と恋の話題なんて、もうまっぴらである。
その途中、八重さんが男子と話しているのが見えた。
__まあ八重さんのことやろ、大して気に留めることもないわ。
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しお(プロフ) - 大福丸◎さん» 遅れた所の話ではないほど返信が遅れてしまい申し訳ありません泣泣 本当に嬉しいです…今更になってしまいましたがコメントありがとうございました! (2022年1月23日 23時) (レス) id: 12c83b804f (このIDを非表示/違反報告)
大福丸◎(プロフ) - すごいよかったです!気づいたら3時間以上はこの小説読んでました笑 もー、本が出版されてたら買いたいレベルです!!笑 久しぶりにこんなにハマりました (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4787af4ccb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» いえいえ、こちらの配慮不足でもあるので......汗 こんな文章ばかりですが、良ければこれからもお読み頂けると嬉しいです! (2018年8月1日 20時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 了解です。何でもかんでも質問してすみません。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 9d036889eb (このIDを非表示/違反報告)
しお - アオさん» 曖昧な部分でもあるので、難しい場合は読み流して頂けると嬉しいです (2018年7月30日 16時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しお | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=harushiomb37
作成日時:2018年5月6日 15時