【QK】透明色の感情を愛と呼ぼう【ymmt】

君の瞳で彩られる世界 ページ2

６という数字が光りエレベーターを降りて店に入るや否や、私は冷房や照明に手を伸ばすことよりも早く、ずっと抱えていた段ボールを地面に下ろした。昨日の私が発注を怠らなければ、わざわざこんなに汗を流す必要もなかったのに。まさに自業自得としか言いようがない。

負荷が取り除かれ両手に血が巡っていく感覚を抱きながら、私はいつも通り開店準備に取り掛かり始めた。

窓から見える夜空は、雲一つないにもかかわらず星なんて一つも見えやしない。その代わり、向かいに見える大企業の本社から漏れる、蛍光灯の光が星のように輝いている…なんて。あまりに酷すぎる比喩表現に、思い浮かべた自分ですら呆れて笑ってしまう。

けれどきっとこの向かいで働いている人達は、星のようにキラキラと輝いているんだろうな。就活に失敗して腐ってしまった私なんかには、眩しくて直視出来ないくらい。

日を重ねるにつれて増えていく溜め息に気付かないふりをして、私は準備の手を動かし続けながら動画を観ることにした。静寂に満たされる薄暗い部屋に一人でいる時は、熱中出来るものに触れていなければやっていられない。

『はいどうもQuizKnock編集長の、伊沢です！』

今となっては当たり前になりつつある、何と言っているのか分からない挨拶が聞こえて来た。画面に映る彼ら、東大発の知識集団ことQuizKnockの動画を観ている時が、私にとって何よりも至福であり至高の時間なのである。頭の良さは勿論のこと、そこから生じるレベルの高い会話やメンバー同士の仲の良さ…。語り始めたら止まらないほど彼らの虜になってしまった私は、簡潔に示すとするならばQuizKnockの限界オタクと言ったところだろう。

『山本で〜す！』

数人の挨拶の後、最後に声を発した無邪気な笑顔の彼に、思わず私は頬を緩ませた。ルックスも中身も可愛さに溢れているにもかかわらず、頭が良くクイズでの活躍ぶりにはファンでも驚かされるほどの実力を持つ彼が、私の推しであり生き甲斐である。

画面上に映る彼らの繰り広げるクイズバトルは、素人目では凄いとしか言葉に出来ないほど異次元な世界が広がっていて面白い。無機質で単調な日々を送る私の生活を彩ってくれているのは、彼らと言っても過言ではないほどに。

『問題。』

その言葉が発された瞬間、彼らの目付きがガラリと変わる。その熱の篭った瞳から溢れ出る真剣さに魅了されない人はきっといないだろう。そんなことを考えながら、私は黙々と作業を続けた。

絶望も希望も表裏一体→←融解するまであと少し

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