14 ページ14
次に茨城に戻ってきたのは、冬休みじゃなくて10月の連休だった。
どうしても実家に置きっぱなしにしていた大学一年の頃の資料が必要で、取りに帰るついでに一泊しようと思って帰ってきた。
なんなら、Aに会えるという下心もなくはない。
東京の部屋で失くしかけてた実家の鍵を使って、家に入る。親は2人とも出かけているみたいだった。
部屋に上がって、一泊だからいつもより軽い荷物を下ろして、目的の資料を忘れないうちにカバンに突っ込む。
さあ、いきなりAに会いに行って驚かせてやろうかな、と良い悪戯を企んでいると、家のチャイムが鳴った。
二階からインターホンを経由するのが面倒で、階段を降りて相手を確認しないまま玄関を開ける。
「あれ、拓司くん？戻ってきてたの。」
チャイムを鳴らしたのは、Aの母親だったようだ。
「あ、お久しぶりです。今からちょうどAを驚かせに行こうかなと思ってたところで。」
「あら、タイミング悪かったわね。A、今日夕飯いらないっていって出かけちゃったの。」
「え、そうなんすか。」
「そうそう、ごめんね。拓司くん帰ってきてるの知ってたら、多分行かなかったと思うんだけど。あ、これ、きのこ狩りに行ってきたお裾分け持ってきたの。よかったら食べてってお母さんに渡しといてくれる？」
前半に聞き捨てならない言葉をぶっ込んで、俺にきのこのたくさん入った袋を渡してきた。
「あ、ありがとうございます。」
「全然よ。ついでにこないだ柿いただいたからありがとうって伝えといてちょーだい。拓司くん、もうすぐ大学卒業だけど、色々頑張ってね。」
そういってAの母さんは帰っていった。
そうか、Aいねーのか。
もうすぐ会える、と楽しみにしていた自分を自覚して、少し居た堪れなくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪葉(プロフ) - junさん» jun 様 ありがとうございます！！励みになります涙 これからもよろしくお願いします！ (2020年10月1日 18時) (
レス) id: 9fa34ce2eb (このIDを非表示/違反報告)
jun(プロフ) - 前回に続き雪葉さんの書く文章は最高です！お気に入り作者さんに入れさせて頂きました！ (2020年10月1日 1時) (レス) id: 37d10c3172 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪葉 | 作成日時：2020年9月30日 23時
