世界の終わりから (ページ17)

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17話ページ17

(メルルside)

リサに俺だけを見せるために、わざとキャンプにいる周りの男を侮辱するようになった。

もともとそういう事をしていたが、それがさらにエスカレートした。

そしてそれをリサが叱ると、やけにムカついた。

俺が悪いのは分かってるが、他の男を庇うのが耐えられなかった。

この俺の小さすぎる心は、弟のダリルに対しても敵意を向けた。

リサは俺に従順だが、それと同じように弟にも懐いていた。

ダリルはリサに対して興味はないような素ぶりだったが、俺には分かった。

弟はリサに対して特別扱いしていると。

だから俺は弟にイラついて、その苛立ちを直接ぶつけたりもした。

そして今日。

俺はこの日、デールと軽く言い合いになってムシャクシャしてキャンプから少し離れていた。

苛立ちを抑えたあと、キャンプに戻るとリサとダリルの姿がなかった。

シェーンに聞くと、2人で山に入ったらしい。

なぜか嫌な予感がした俺は、2人を探しに急いで山に入った。

1時間探したが、見つからない。

苛立ちはとっくにピークを超えている。

こんなクソ広い山で、どこに行ったかもわからない人間をそう簡単に見つけられるはずもなかった。

もしかしたらもう2人はキャンプに戻ったかもしれない。

そう思ってキャンプに向かうと、ふと人が歩く音が聞こえた気がした。

ようやく見つけた。

リサ達か、ウォーカーか、どっちかわからないから、音が聞こえた方角に忍び足で物音を立てないように近付く。

数分歩くと、遠目に2人の人間の姿が見えた。

あれはきっとリサとダリルだ。

俺はなぜか、そのままこっそりと近付く。

話し声は聞こえないが、2人の姿がはっきりと見える距離まできた。

だが様子がおかしい。

バカみたいに2人で見つめあっていて、動かない。

心臓が鼓動を早める。

なぜか俺まで動けなくなっていた。

その時、ダリルがおもむろにリサに手を伸ばす。

そしてその手が顔に触ったかと思えば、そのままリサの後頭部を掴んで。

俺が心底惚れてる女に、弟がキスをした。

ふざけんじゃねえ。
ぶっ殺してやる。

そんな気持ちが一瞬沸き起こるが、それ以上に今まで味わったことのないよくわからない感情が俺を飲み込んだ。

一瞬リサの体がビクついたように見えて、それがさらに無性に俺の心を震わせる。

俺は何も出来ず、2人に気付かれないようにその場から逃げた。