15話 ページ15
思わず動きを止める。
互いの吐息が顔にかかる距離で。
あと少しなにかの拍子に動けば唇が触れ合う距離で。
俺はジッと動けなくなった。
なにやってんだ俺は。
リサが俺にこんな事を求めるはずがない。
なのに俺はなにをしようとしてんだ。
「アホくせぇ」
自分のバカさに呆れ、思わずそう呟く。
すると、超至近距離にいたリサの肩が少し跳ねた。
俺は顔を離して、後頭部にやっていた手をリサの頭の上に置く。
「悪い、冗談だ」
余程嫌だったのか、いつのまにかうるんだ瞳のリサは、俺を少し見つめたあと、ふと視線を地面に移す。
「もう帰んぞ」
気まずい空気に耐えられなくなった俺は、キャンプに戻ろうと足を進める。
「ダリル、変なこと言ってごめんね」
俺の後をついてくるリサは、さっきまで一緒に歩いてた時よりずいぶん俺と距離を取っていて。
なぜかむしゃくしゃした。
今までいい関係を築けていたが、このことで変になっちまったら...。
いや、そんな事をなぜ俺が気にする必要がある。
そうだ、俺には関係ない話だ。
こいつが離れて行こうが、俺にはなにも問題ない。
それにこいつには兄貴がいる。
兄貴はたぶん、リサを大事に思ってる。
だからもし、俺がリサに手を出したなんてことになったら兄貴がどんな行動に出るか、分かったもんじゃない。
「別に俺は気にしてねぇよ。だからお前も気にすんな」
さっきのだって、些細なことだ。
別にこいつがそれで傷つくはずがない。
すぐに元どおりになる。
そう言い聞かせながら、俺たちはキャンプに戻った。
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ぺろ - 続きを楽しみにしてます (2022年7月15日 19時) (レス) @page25 id: 1cd0628146 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aaa | 作成日時:2021年1月17日 12時