14話 ページ14
ダリルside
ジッと俺を見上げ続けるリサの瞳が、心なしかうるんで見える。
俺の服を握って微動だにしないコイツの考えが読めなくて、俺は戸惑っていた。
「おい、リサ」
いい加減にしろ、と続けて言うつもりで開いた口から出た声が、異様に優しくて自分でも驚く。
リサはなぜか少し泣きそうな顔をしながら、ようやく口を開いた。
「なんか...触りたくなった」
耳をすまさないと聞こえないような小さな声で、よく意味がわからないことを言われて俺は面食らった。
「何言ってんだお前」
思わずそう呟くも、リサはただ俺を見つめるだけで。
「どうしてほしいんだよ」
この動揺を悟られないように、わざと呆れたような表情を作りごまかす。
「わかんない」
困ったようにそう答えたリサに対して、困ってんのは俺の方だとため息を吐く。
リサはいつも素直で、思ったことがすぐに顔にでる分かりやすい人間だと思っていた。
だが今こいつがなにを求めているのか、どうしてほしいのか、俺には見当もつかない。
「バカじゃねえの」
そう言いながら、俺はリサの頬に手を添えた。
なんでこんな事をしてるのか、俺にも全然わかんなかったが、今はこうする事が自然な様に思えた。
頬に手が触れた瞬間、リサの視線が少し驚いたように一瞬揺れる。
こんな世界になってから、女にまじまじと触れたのは初めてだとか、そんなどうでもいい考えが頭の隅に一瞬よぎる。
頬に触れた手をそのまま後頭部に回して、柔らかい髪に指を通す。
ジッとリサを見つめながら、ゆっくり顔を近付けた。
こんな事したらマズイのは分かってる。
だがなぜか止まらない。
キスするのが当たり前みたいな、そんな訳わかんねぇ空気になってしまってる。
あと少しで唇に触れる距離。
リサの息が俺の顔にかかる距離。
柄にもなくなぜか緊張して、本当にしてしまっていいのかと自問する。
「ダリル...」
その時、不安げなリサの小さな声が耳に届いた。
60人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺろ - 続きを楽しみにしてます (2022年7月15日 19時) (レス) @page25 id: 1cd0628146 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aaa | 作成日時:2021年1月17日 12時