世界の終わりから (ページ13)

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13話ページ13

ダリルに触れたことがないという訳じゃない。

もう数ヶ月も一緒に過ごしているんだし。

キャンプの他のメンバーより、ダリルとメルルとの距離は近いと思う。

隣に座っていて、腕同士が触れ合うなんてこともある。

ウォーカーに遭遇して、手を掴まれて逃げたこともある。

山の斜面でこけそうになって抱きとめてもらったこともある。

これまで何度もダリルに触れてきたし、触れられてきた。

その時にはなにも思ってなかったはずなのに。

なぜか今、無性に彼に触れたくて仕方ない。

「ねぇダリル」

多分もうあと10分も歩けば、キャンプに着くだろうというところまで来ている。

「どうした」

周囲への警戒をしているのか、辺りを見回しながら答えるダリル。

その視線を私の方へ向けてほしくて、思わずダリルの服の裾を掴む。

「ねぇってば」

突然の私の行動に驚いたのか、少し驚いたような顔で振り向く。

ようやくぶつかった視線に、自分で呼んでおいて何だが言葉に詰まった。

少しの間の沈黙を破ったのは、ダリルの方だった。

「リサ、どうした」

青みがかったグレーの綺麗な瞳が、じっと私を見つめるせいで視線を逸らすことが出来ない。

ダリルの袖を掴んだまま動けずに黙ったままの私。

「なんだ。なんかあるなら言え」

言える訳ない。

なんとなく触れたくなっただけ。

急に人恋しくなっただけ。

優しい言葉に絆されただけ。

そんなこと言えるはずがない。

言えばきっと呆れられる。

バカかって言われるに決まってる。

だから、なんでもないって言わなきゃいけない。

ただ呼んだだけって言えばいい。

それなのに、なぜか私はなにも言えなくなってしまった。