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出発の時間になって、私はメルルの元に向かう。
「メルル」
名前を呼ぶと、彼は投げやりな視線を私に向けた。
「なんだ」
少し掠れた声。
いつもはもっと優しいはずが、今日のメルルはやっぱりおかしい。
「無理しないで。無事に帰ってきてね」
なんだか不安になった。
全てに投げやりな態度をしているメルルは、いつも以上に危なっかしい。
「お前に言われる筋合いはないだろ」
そう突き放されるも、私は心の中に疼く不安を無視できなくて、メルルに再度念押しする。
「お願いだから、無茶だけはしないで。待ってるから」
そう言ってメルルの瞳をジッと見つめる。
メルルは少し考えるように黙って、そして口を開いた。
「お前は別に、俺がいてもいなくてもどうでもいいんじゃねえのか」
そう言って私の後ろに視線を向ける。
その視線を追って後ろを向くと、ダリルがいた。
途端に、目があったらどうしようと思い視線を逸らし、メルルの方に向き直る。
「私はメルルがいないと嫌だよ。私にとって、メルルが大切な人だって分かってるでしょ。だからここで、メルルの帰りを待ってるから」
私の言葉がメルルにちゃんと届いているのか定かじゃないが、伝えたいことはきちんと伝えられた。
みんなが車に乗り込み、離れていくのを見送る。
車が見えなくなるまで、私はそこから動けなかった。
嫌な予感がする。
言葉に表し難い不安が、頭の中を支配していた。
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ぺろ - 続きを楽しみにしてます (2022年7月15日 19時) (レス) @page25 id: 1cd0628146 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aaa | 作成日時:2021年1月17日 12時