3. ページ10
「私は一回言いましたもん。玉砕しましたけど」
「あれは…その、すまなかった。必要以上にキツイ言い方をした自覚はある」
ほうほう。先生もバレンタインのことは覚えてるのね。
「申し訳ないと思うならちゃんと言ってください！」
私を見たがらない先生の肩を掴んで無理やり目を合わせる。
怒られるかな、と一瞬思ったけれど先生は嫌そうな顔をするだけで怒りはしなかった。
「好ましく、思ってる」
「それだけですか？」
詰め寄る私には、それだけなはずがないって確信がある。
だって私の知ってる櫻井先生は学生の贔屓なんか絶対にしない。
態度が悪い生徒は切り捨てるけど真面目な子は面倒を見る。
言ってしまえばそれ以上の区別はしない。
なのにその先生がわざわざ私のためにピアスを買ってくれていた。
それが意味する事は、きっと。
可愛がっている学生という事以上を期待しちゃダメだというのは無理な話だ。
「先生！」
「……はあ、分かった。降参だ」
諦めたように一つ息を吐いて、先生は微笑った。
「好ましいという表現は逃げだった。一人の人間として、お前を愛してるよ」
”愛してる”
人生で初めて言われた言葉に嬉しさで胸が震える。
どうしよう。すごく嬉しい。
でもさ、じゃあ私が告白した時のは何？
これが夢でないとしたら、あの冷たい言葉と凍て刺すような視線はなんだったの？
「じゃあバレンタインの時は…？」
先生はすっかり観念したのか、私が恐る恐るした質問にも嫌そうに答えてくれた。
「生徒と付き合うわけにはいかないからな。それに俺みたいな偏屈な年寄りと付き合ってたら君の将来に悪影響だと思ったからだよ。諦めてもらうためとはいえ傷つけるような事を言ったのは……悪かった」
だから言うつもりは無かったんだがな、と先生は困ったように笑う。
「せめて最後に姿を一目見て、ピアスを渡そうと思ってたんだ。まさか堪えきれなくなるとは…情けない」
情けなくなんかない。
私が先生を、先生が私を諦める前にこうして思いを伝えあえたのは先生の行動あってのことだ。
でも先生がそれを自分の過失だと思うんだったら言わない。
「じゃあ私の粘り勝ちですね」
「そうとも言うな」
こうなったのは私のせいってことにしておこう。
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snow - 初めてコメントさせていただきます。いつも、というか毎日(笑)、更新楽しみにしております。紫苑さんの作品はどれも好きです！またリクエスト思いついたらコメントしようと思っています(笑)これからも応援してます！！ (2021年3月2日 17時) (
レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - おはよぉございます。朝からドキドキしちゃいました(笑)蛇に睨まれた蛙状態ってこの事を言うんですよね。長期戦…潤くんの出方が楽しみです。 (2021年3月2日 8時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - りえさん» りえさんコメントありがとうございます！リクエストもありがとうございました！テンポの良い会話は意識しているところでもあるので感じ取っていただけて嬉しいです！今後もよろしくお願いします。 (2021年2月20日 22時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
りえ(プロフ) - こんばんは。素敵な物語をありがとうございました。ハラグロ〜をリクエストしたりえです。テンポが感じられる会話と、ちゃんとヒロインを見てくれている彼を感じられました。今後も更新を楽しみにしております。 (2021年2月7日 22時) (レス) id: 21caf3f58b (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - kazuさん» 読んで下さってありがとうございます！DM頂いてない方のフォローリクエストは消去してしまってることがあるのでフォローできてないかもしれません！もしフォロー出来ていなかったら青い鳥でのお名前を教えて頂ければ許可しますのでコメントをくださればと思います。 (2021年2月6日 23時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2021年1月4日 12時
